第七話 友達の彼女の躾
「こんなもんで良い?」
「うん、ありがとー、みんな。お家の中、綺麗になったよ」
それから五人で家の中を掃除をし、やっと家の中が綺麗になった。
一体、どんだけ掃除してなかったんだが……変な生ごみも
「何で私達がこんな事を……てか、鎌田先輩、いつも皆川先輩の家を掃除しに来ているんですか?」
「毎日じゃないけどさ。実は付き合う前から、手伝っていたんだ。美緒が家の片付けが出来なくて、悩んでいたって話を聞いて」
「うん、幸助君、とってもお掃除も料理も上手なんだよー。美緒の家、そのおかげで綺麗になったの」
「何で、幸助がそんなことまで……」
「困ってる人を見ると放っておけない性格でさ。美緒は手がかかるから、世話しがいがあると言うか」
「だからって、幸助がやることないじゃない……お人好しって言うか、頭おかしいレベル」
矢口も桐子ちゃんも、そして俺も呆れてしまったが、まさか、皆川さんと付き合う前から、そんな事をやっていたとは。
もしかして、皆川さんが幸助を好きになった理由ってこうやって家事をやってくれるから?
彼氏だからって、高校生で彼女の実家の掃除までやる奴は幸助くらいだろう。
「凪たちにも手伝わせちゃって、ゴメンなー。でも、ちょうど良かったよ。俺一人だと大変だったし」
「もう、手伝いませんけどね……先輩にはお世話になったから、今回ばかりはそのお礼って事にしておきますけど」
「あはは、流石桐子ちゃん。ほら、美緒。みんなにもちゃんとお礼をしないと」
「美緒のお家、お掃除手伝ってくれて、ありがとうございますー」
「はは、ちゃんとお礼を言えて偉いな」
「…………」
いや、何て言ったら良いんだろう?
この二人って、一応高校生なんだよな?
皆川さんが子供っぽいのは元からなんだが、幸助もこれじゃ彼氏というよりは……。
「幸助、あんたまるで、美緒ちゃんの保護者みたいじゃない」
「保護者? いやー、そんな事は無いけどな。困った人は放っておけないだけ。ましてや、彼女だったら、何かあったら助けるのは当然じゃない?」
「そういう事じゃなくて……何かキモイんだけど」
キモイというか、違和感は俺もめっちゃ感じる。
というか、いくら彼氏だからってここまでやる? 俺なんか彼女も出来た事ないから、何とも言えないんだけどさ。
幸助もちょっとおかしいかも……ボランティアなんかは結構参加しているから、人助けが好きってのは知っていたけど皆川さんの為に、家の掃除までやってあげるって、もう親も公認の仲なのか?
「人聞きの悪い事を言うなよ。手伝ってくれたことには感謝しているんだからさ。宗太も桐子ちゃんも悪いな、巻き込んじゃって」
「いえ……あのー、私、もう帰って良いですか? 明らかにお邪魔ですよね」
「私も。疲れちゃった」
「何かジュースでも奢ろうと思ったんだけど……悪いな、二人とも」
「帰っちゃうのー? 美緒のお家で遊んでいけば良いのに」
「私、忙しいから。じゃあね」
二人とも呆れた顔をして、皆川さんの家を出ていく。
多分だけど、二人ともこの家に遊びに来ることはないだろうな。
だって掃除の手伝いなんかされたら構わんもん。今日だって、結構片付けるの大変だったし。
皆川さんには関わらない方が良いって、噂話では聞いていたけど、こういう家庭事情もあるからか。
「それじゃ、俺も」
「ちょっと待った。宗太はまだ話がある」
「何だよ?」
俺も二人に続いて帰ろうとすると、幸助に引き留められてしまい、
「頼みがあるんだ」
「頼みって……また、この家の掃除手伝えとか言わないだろうな?」
「そうなんだよ。駄目? お前しか頼めないんだ」
半分冗談で言ったんだけど、マジだったのかよ。
「だってお前、俺達の仲を応援するって言ったじゃん。美緒が困っている時は助けてやってくれよ。俺だけじゃ手に負えない事もあるし、何より、美緒も宗太に懐いているみたいだし。美緒、宗太の事、好きか?」
「うん、好きー! 佐藤君も優しいもんね」
「だってさ」
「いや、だからってさ……」
仮にも彼氏の目の前で他の男子を好きとか言うなよ……それをヘラヘラ笑って許している幸助もだ。
俺だったら、絶対許せんとまでは言えないけど、嫌な気分にはなる。
「頼むよ、お前だけなんだって。凪とか桐子ちゃんは何か、美緒の事を話すと不機嫌になるんだ」
「へえ、何でだろう?」
「さあな。美緒と付き合い始めてからは特にだよ。ああ、水谷会長もかな。何か表情が微妙に曇るんだ。そんなに俺って美緒に釣り合ってないかな」
「そんな事は……ないんじゃない?」
何でって、そりゃ三人は皆川さんの事を嬉しそうに話したら良い気分はしないの当然じゃん。
というか、気づいてなかったの? 割とわかりやすくアピールしていた気するんだけど。
「わかったよ。しょうがないな」
「ありがとう。やっぱり、持つべき物は友達だよな。美緒、宗太もこれからは家のお手伝いしてくれるって。こいつ、意外に料理上手いんだぜ」
「本当? 楽しみー。今度、美緒にもビーフスロト……何だっけ? とにかく、ビーフ何とかを作ってね」
おい、勝手に話を進めるな。ビーフストロガノフなんぞ作った事ねえよ。
とはいえ、このゴミ屋敷をまた片付ける事になるかもしれないと思うと……憂鬱だな。
休みの日になり――
「さて、買い物の前にちょっと本屋にでも寄ろうかな」
日曜日になり、ちょっと町まで出て買い物を済ませる。
実は親が出張でいなくて、最近は夕飯も自炊しないといけないのだ。
と言っても、面倒なのでコンビニ弁当も多いんだけど……。
「あ……」
書店に入ると、入り口の前でバッタリと生徒会長の水谷先輩と会ってしまった。
「先輩。どうも」
「佐藤君。こんな所で会うなんて奇遇ですね」
「ええ。先輩は……」
「ちょっと参考書を買いに来たんです。受験も近いので……」
ああ、三年生だから受験だもんな。
それにしても私服姿の水谷先輩をお目にかかれるとは。ノースリーブのブラウスにベージュのズボンとカジュアルだが中々決まっている服装をしている。
可愛いというよりは美人で格好いい感じのお方なんだよな。
「じゃあ、俺は……」
「ねえねえ、次は何処に行くー?」
「ん? そうだな。美緒は……」
と先輩とちょっと話していると、聞き覚えのある声がしたので、振り向いて見る。
「幸助に皆川さんだ」
こっちには気づかなかったみたいで、通り過ぎてしまったが、あいつらデートだったのか。
皆川さんは幸助の腕をがっしりと組んじゃってまあお熱い事で。
「はは、二人とも今日も……」
「な……何てはしたない……」
「へ? せ、先輩?」
二人の姿を見た後、水谷先輩はわなわなと震えながら、二人の方へ向かっていった。
え? 何する気?
「皆川さん!」
「んーー? あ、会長」
「何ですか!? その格好は!」
「か、会長!?」
皆川さんを見るや血相を変えて、会長は彼女の手を掴み、
「こんな変な格好をして、往来を歩いて! 女子として恥ずかしいですよ! 鎌田君も、何で何も言わないんですか!?」
「は? 何でって言われても……」
流石の幸助も困惑しているが、先輩は更にキョトンとしている皆川さんに食って掛かり、
「そんな薄汚い服を着て、リボンもきちんと結んでないし、靴下もちゃんと履かないで! しかも、高校生なのにこんな子供っぽい服! 笑われますよ、こんな格好をして歩いたら!」
「ふ、ふええ……」
皆川さんの服を見てみると、確かに子供が着るような服でちょっと汚いし、リボンもちゃんと結んでないし、靴下も揃えてないので、慌てて会長が身だしなみを揃えていく。
「もう、せめて清潔感は保ってください! 鎌田君も! あなた、彼女がこんな格好をしていて何も注意しないかったんですか!?」
「す、すみません……これも美緒の個性かなって。可愛いじゃないですか」
「可愛いも何も、これじゃ不潔ではしたないです! 鎌田君、あなたも……」
と、今度は彼氏である幸助に説教を始める水谷先輩。
この人……良い所のお嬢様らしいけど、何て言うか潔癖症だったのか?
美人で完璧超人で良い人かと思ったけど、完璧を求めすぎているんだろうか




