第十九話 美緒ちゃんが行方不明?
「ん? 幸助からか。はい」
『よう。ちょっといいか?』
「何?」
夜中になり疲れたのでそろそろ寝ようと思ったところで、幸助から電話がかかってきたので、出てみる。
『今日、美緒の家に行ったんだって? 美緒から聞いたよ』
「ああ。美緒ちゃんの家の掃除とか料理とか色々やって疲れちゃったよ。お前、いつもやっているのか?」
『ははは……いつもって訳じゃないけどな。最近は生徒会の仕事が忙しくて。ほら、もうすぐ文化祭もあるしさ』
「ふーん。正直さ、理解できないんだよな。美緒ちゃんが何か訳アリ家庭で大変そうなのはわかるけど、何で彼氏のお前が美緒ちゃんの家の家事までやっているわけ?」
彼女と言っても、所詮は他人なんだし、無償でそこまでやるのは本当に理解できない。
いや、そんな事を言ったら俺の方がもっとか。美緒ちゃんの彼氏でもなくただのクラスメイトってか友達でしかないのに、何故掃除や料理にその後の皿洗いまで、全部引き受けてしまったのか。
しかも大してお礼も言わないし、何やねんあのおばさんは。
ちょっと可愛い顔をしているからって、他人に家事をやらせるなよ。
『まあ、困った人は見過ごせないというか……一応、明日も行く予定なんだ。澪とのデートの帰りに』
「お前も大変だな。俺はもう行かないよ。また家事を手伝わされちゃ敵わんからな」
『そ、そうだよな。でもさ、お前も手伝うって言ったじゃん。俺とお前の仲だし、美緒とも友達になったんだろ』
「友達だからって、そこまでやりたくないよ。流石に勘弁してくれ。美緒ちゃんの面倒を見るの好きなんだろう? お前がこれからはやってくれ。じゃあな。今日は疲れちゃったんだ」
『ああ……じゃあな』
と言って、幸助との電話を切るが、心なしかあいつも少し疲れているみたいで心配にはなってきた。
とはいえ、事実だろう? 美緒ちゃんと俺は精々、異性の友達って関係でしかないし、しかもその美緒ちゃんは俺の友達と付き合っているんだ。
本来、俺が彼女のプライベートに踏み込める立場じゃないんだよ。
そう言い聞かせて、ベッドにもぐりこみ、今夜は床に就いたのであった。
翌日――
「ん……ふわあ……電話? はい」
『もしもし。佐藤先輩ですか?』
「桐子ちゃん? どうしたの、こんな時間から」
『そのー、美緒ちゃん知りませんか? もう練習始まる時間過ぎているのに、来ないんですよ』
「え? 美緒ちゃんが? 新体操部に来てないってこと?」
『はい』
朝から桐子ちゃんから電話が来たので何事かと思ったが、美緒ちゃんがまだ新体操部の練習に来てないとのこと。
時計を見たら、もう九時半近くになっているのか。
『直接電話をしても、全然でないし、LINE送っても返信はなし。幸助先輩に連絡しても知らないって言いますし、何処に行ってるんですかね、もう』
「あー、どうしたんだろうね。彼女、遅刻が多いからなあ」
桐子ちゃんは美緒ちゃんが新体操部の練習に時間通り来てないことに、かなり怒っている様子であったが、美緒ちゃんは遅刻の常習犯である事を思い出した。
やっぱり部活でも遅刻しちゃうんだな……普通の練習なら、別にいいけど、これが大会とか試合の日だと大変な事になるのわかっているのかな。
『もう、美緒ちゃん遅れるなら、せめて事前に連絡してほしいです。それとも、もう新体操部に興味なくしたとか? じゃあ、それならそれで構いませんけど、それでも一言欲しいですよ』
「ま、まあ落ち着いて。わかった。俺の方も何とか言ってみるから。幸助の所には本当に来てないのか? 今日はあいつとデートって話だったんだけど」
『さあ。幸助先輩に電話しても、『美緒はいつもそんな感じだし』って言うだけで、当てにならないんですよ』
あいつらしいっちゃそうだけど、もうちょっと心配してやれよと思う。
「わかった。俺の方からも連絡するから。桐子ちゃんは一人で練習出来そう?」
『いつも基本はそうですし。じゃあ、お願いしますね。時間ももったいないですから』
と言って、桐子ちゃんは電話を切り、即座に美緒ちゃんの携帯に連絡を入れる。
「出ないな……」
美緒ちゃんのスマホに電話をしても、一向に出てこない。
何かあったのか? 練習はサボっているのかもしれないけど、今日は幸助とのデートがあるはずだから、それには遅刻しないと思うんだけど……。
(どうしよう?)
スマホでの連絡が出来ない以上は、もう直接、美緒ちゃんの家に行くしかないのか?
あの家にはもう二度と行くまいと思ったんだが……でも、美緒ちゃんの事が心配だし。
「しょうがないな」
まだゆっくりしていたかったが、着替えて、自転車に乗り込み、美緒ちゃんの家まで急いで直行する。
トホホ……俺は何をしているんだろうな。美緒ちゃんの為に、どうしてここまでしないといけないのか。
「はあ、はあ……着いた……美緒ちゃんは……?」
自転車をダッシュで走らせて、ようやく美緒ちゃんの家に到着し、彼女が在宅していないか外から様子を伺う。
お母さんと二人暮らしらしいが、美緒ちゃんがいる様子は……取り敢えず、家に行ってみるか。
ピンポーン。
「…………」
呼び鈴を押してみたが、応答は全くない。誰もいないのか?
家にいないとなると、美緒ちゃんが何処にいるか、もう俺には見当が付かないぞ。
「すみませーん!」
玄関の戸を叩いて声をかけるが、全く応答がない。
親もいないのか? 困ったな……じゃあ、学校にでも行ってみるしかないか。
「美緒ちゃん、何処にいるのかな……」
自転車を押しながら、その間、近くの公園とかコンビニとかも調べてみたが、美緒ちゃんの姿はない。
電話をしてもメールやLINEも応答がないし、心配だな……。
「俺達、友達なんじゃないの?」
美緒ちゃんもさ。何か悩みがあるってなら、俺に相談してくれれば……いや、あいつには幸助もいるし、幸助は俺よりも頼りになる奴だけど、彼氏にも相談しにくい事とか。
「なんて思っている間に学校に着いてしまったな」
そう思いながら、自転車を走らせると、学校に着いてしまった。
もしかしたら、既に美緒ちゃんが部活に来ているのかも。
「あら、佐藤君ではないですか」
「水谷先輩。あ、どうも」
校舎裏の辺りまで行くと、水谷先輩が弓道着姿で俺に声をかけてきた。
「今日は部活ですか?」
「ええ。佐藤君はどうしましたか?」
「あのー、美緒ちゃんが何か新体操部の練習に来てないみたいで。桐子ちゃんが心配して、俺に知らないかって電話をしてきたんですよ」
「まあ、心配ですね。わざわざ学校まで探しに来るなんて……と言いたいところですが、佐藤君。休日でも学校に来るときは制服か学校指定のジャージを着てきてくださいね。私服で校内を徘徊すると、不審者に見られてしまいますよ」
「す、すみません」
しまった私服で学校に入るのはまずかったか。
「鎌田君には連絡していないんですか?」
「したけど、知らないって言うので……あいつも、少しは探してやれば良いのに。生徒会が忙しいからって、美緒ちゃんと会う機会少なくなっているらしくて」
「? 生徒会は今、特に忙しくないですよ?」
「え? そうなんですか?」
「はい。全く仕事が無いわけではないですが、生徒総会も体育祭も終わりましたので。文化祭の時期になると忙しくなりますけど、それはもう少し先ですよ」
「ええ……そうなの?」
じゃあ、忙しくなるから会えないってのは?
もしかして幸助が美緒ちゃんを避けているって事は……




