後始末1
柱に凭れ掛かっている紀藤。
ピクリとも動かない。
生きてはいる。
呼吸で上体は微かに動き、肩は上下している
だが、普通の状態ではない。
先ほどよりかは、筋肥大は縮んでいるが、それでも異常だ。
生気を失った肌もそのまま。
ダメージを受けた個所の赤黒い変色は、異常性を感じさせた。
振り返ると、土門が両掌をまじまじと見つめていた。
「何してんだ?土門。」
「いや、何か、ちかちか光ってた気がしたんだ。アイツをぶっ叩くと。」
掌を見たまま返す土門。
(確かに、そんな気もするけど…)
紀藤を見る。
(それどころじゃなかったしな…
それより、連絡するしかないか…。)
携帯を取り出し、芳賀の連絡先を探す。
呼び出し音が三回。
夜の駐車場に、電子音が無機質に反響する。
「上角君。どうした、こんな時間に。何かあったのかい?」
***
電話から30分ほど経って、芳賀が地下駐車場に現れた。
何人かの部下らしき人間を引き連れて。
驚いたことに、その中に混じって遊馬の姿があった。
いや、考えてみれば当然かもしれない。
人払いの結界とやらを張っているのだろう。
「一月ほどで、こんな連絡が来るとはね。」
芳賀が、何とも言えない表情で口にした。
「あれかい?」
肯くと、芳賀が紀藤に近づいた。
遊馬もその後を追う。
周りの部下らしき数人は、オレがのした紀藤の部下を運び出していた。
芳賀は紀藤の前にしゃがみ込むと、手袋をはめた指でその土気色の肌に触れた。
隣で覗き込む遊馬の表情が、一瞬で険しくなる。
「薬物を服用したんだってね。」
「そうだ。懐に入っているはずだ。」
遊馬がジャケットを探り、ドラッグケースを取り出すと
芳賀の部下の一人に手渡した。
芳賀は、オレと土門を交互に見る。
「君。私のことは上角君に聞いたかい?」
「警察の人だろ?」
「公安の芳賀という。」
警察手帳を懐から取り出し見せる。
「土門だ。土門竜馬。」
「えぇと。上角君とは、どういう?」
少し考える土門。
「うーん。何だろな?先輩…じゃ、ないしな。バイト仲間、かな。」
こっちを見る土門。
「なんでも、いいよ。」
適当に答える。
再度紀藤に目を向ける芳賀。
「あれは、君ら二人でやったのかい?」
「まぁな。」
芳賀の顔に怪訝な色が浮かぶ。
ふと見ると、遊馬は鋭い視線で事の成り行きを見守っていた。




