決勝戦3
次の瞬間、藪木は拳を放った姿勢のまま、糸の切れた人形のように、マットに沈んでいった。
レフリーが割って入り、俺の前を遮る。
ケージを囲む歓声が、一段、大きくなり、それに気づいた。
レフリーが俺の名をコールし、腕を上げる。
(…勝った。)
「……っ、はぁ……」
熱を帯びていた視界が、急に冷めていく。
胸を安堵が満たし、
今さらになって、腕や体の痛みを実感する。
藪木に仲間とスタッフが駆け寄り、担架が搬入される。
それと一緒に紀藤がケージに入ってきた。
紀藤―――多分、こいつがドーピングの指示を出した。
証拠はないが、十中八九そう考えて間違いない。
紀藤が、搬送される藪木を尻目にマイクを受け取る。
「今日のG-RAVE、どうっだっただろうか。
全試合が素晴らしかったと言っていいんじゃないか。どうだ?」
紀藤は盛り上げ方を心得ている役者のように、観衆を煽る。
そして、歓声がそれに応えた。
「本当に選手のみんなは、よく闘ってくれた。
そして、その中心である上角空斗。お前には、約束通り相応しい報酬がある。」
といって、懐から出した賞金入りの封筒を掲げ、
「賞金だ。受け取ってくれ。」
オレに差し出した。
その顔は自信に満ちていた。
だが、それだけではない何かを感じる。
獲物を狙うヘビのような―――。
その表情を確かめつつ、封筒を受け取る。
紀藤は、再度、観客に向き直る。
「オレはバウトが好きだ。
愛していると言っていい。
オレはもっとバウトを大きくしたい。
このようなイベントを定期的に開いていきたいと思っている。
そして、G-RAVEは年に一度の大きいイベントにしていきたい。
みんな、どうか楽しみにしていてほしい。」
一段と大きい歓声が沸き、G-RAVEは幕を閉じた。




