藪木vs宇郷1
宇郷は無造作に藪木に近づくと、挨拶代わりのように足を突き出す。
当然のように、その前蹴りを躱す藪木。
蹴り足が下がる瞬間――鋭いワンツーが宇郷の顔面を射抜いた。
だが、宇郷は怯まない。
鼻血を吹きながら、右拳を大きくに振り抜く。
藪木は最小限で躱し、がら空きになった宇郷の脇腹に拳を突き込む。
レバーブロウ。
宇郷の顔が一瞬歪む。
呼吸が止まり、苦悶の表情が浮かぶ。
だが、宇郷はそのまま、強引に裏拳を振り回す。
藪木は退がりつつスウェー。
再び、二人の間にじりじりとした距離が生まれた。
視線が交錯し、ケージの中で火花を散らす。
(構えが変わった……?)
宇郷は、無造作に振り回していた腕を畳み、両脇を固めて拳を前方へ突き出す。
(ボクシングで対抗するつもりか?)
放たれたのは、一見すると腰の入っていない、無骨な「手打ち」のパンチ。
だが、藪木の表情が変わる。
肩を入れたその突きは、十分に重さが乗っていた。
息つく暇を与えず左右連続で顔面に放たれる拳。
重機が杭を打ち込むように、逃げ場のない圧力が藪木を襲った。
藪木は、ガードを弾かれつつもスウェーやダッキングで躱し、反撃の拳を繰り出す。
拳が応酬し、交錯する。
互いに被弾はするものの
藪木のクリーンヒットが積み重なり、宇郷の劣勢に傾く。
だが次の瞬間。
宇郷の丸太のような蹴りが、藪木の腹に突き刺さった。




