噂
「賞金っていくらだよ?」
「150万。」
――――!!!
金額に言葉を失う。
ざっと計算して、バイト100回分。
「…それで、何で困ってんだ?」
「出場者は胴元が決めて良いってんだが、どうしたもんかなぁってよ…。
一応、老舗のメンツもあるからなぁ。
…無理することもないんだがよ。」
雁屋が塀に肘をつく。
「無理?」
「みんな、嫌がってんのよ。」
「150万で?」
「紀藤のところだからなぁ…。それになぁ…。」
まだ、何かあるらしい。
「それに、何だよ?」
「いや、大きい声じゃ言えないんだけどよ。」
雁屋が声を潜める。
「…ドーピングの噂があんだよ。」
…ドーピング。
信じられない言葉が出た。
雁屋が横を向いて煙を吹く。
「なんか、紀藤のトコで、急に強くなった奴がいるんだってよ。
…噂だけどな。」
そこで、何かが引っ掛かった。
連想となり、胸を騒つかせる。
――いや、さすがに考えすぎか…。
雁屋が、塀にもたれ掛かる。
「土門、帰ってきてんだろ。…アイツに振ろうかな。
あいつなら大丈夫だろ。」
「……オレが出る。」
気づいたら、口から出ていた。
煙草を咥えた雁屋が、少し驚いた顔をする。
「あ、そう? オマエ出る? じゃ、任せたわ。」
雁屋は悩みが消えて、スッキリした顔になった。
OKらしい。
気づけば、拳は固く握られていた。
金を手に入れ、”靄”を晴らす。躊躇いは無くなっていた。




