バイト
いつも使ってる駅の、反対側。
オフィス街の外れの再開発エリア。
その一角の工事現場。
仮設フェンスに囲まれ、重機の音が響いている。
日雇い、取っ払い一万六千円。
午前中は、セメント袋を担いで何遍も往復した。
腕の筋肉が、熱を持って張っている。
鉄骨の山に腰を下ろし、いったん休む。
顎から落ちた汗が、土に滲んだ。
「よ、お疲れさん。」
視界に影。
見上げると、目の前に2m近い巨漢が立っていた。
作業着にバンダナ。
岩みたいな顔が男臭く笑っている。
「…土門。」
土門竜真。
中学時代は先輩で、高校に上がったら同級になっていた男。
そして学校から消えて、今ではバイト仲間。
海外を放浪して、帰国してはバイト――そんなことを繰り返している。
バウターでもある。いわゆる変人だ。
疲れた様子ひとつない。筋力と体力がバケモノみたいな男だった。
「ほれ。」
渡してくるペットボトルを受け取る。
「サンキュ。」
すぐさま口をつける。
冷たさが喉を潤し、全身の熱が引いていく。
「今度はどこ行ってきたんだよ。」
「台湾寄って、あとはいろいろだ。」
土門のスタイルは、”八極拳のような拳法”。
台湾で”インチキ臭い爺さん”に習ったそうだ。
また行って来たらしい。
土門が隣に腰を下ろす。
「そう言えば、レイヴの話、聞いたか?」
「レイヴ?」
「賞金が出るバウトの大会?―――みたいなもんらしい。」
「へぇ…。」
物好きなやつもいるもんだ。
…報酬次第じゃ、出てもいいかもな。
「土門は出るのか?」
「それなんだけどなぁ。まだわかんねぇ。」
土門は腕組みしながら答える。
まぁ…こいつ、金に執着ないからな。
土門が立ち上がる。
「休み終わっちまうぞ。飯、行こうぜ。」
飲み終えたペットボトルを握り潰し、その後を追った。




