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薬

夕刻。


帰宅途中の駅前では、ボランティア団体が活動していた。


パイプテントが幾つか設置され、精力的に動いている。


その向こうに、見覚えのある姿があった。


「……神谷のおっさん。」


ポケットに手を突っ込み、テントを眺めながら歩いている。


目が合うと、ゆっくり近づき、広場の端のベンチを示す。


二人で移動すると間を置かずに切り出してきた。


「おい、上角。おめぇ、薬の噂、聞いたことねぇか?」


「薬…?」


「こないだ、暴行でしょっ引いたやつがな。

 見たことない薬、飲んでたみてぇでよ…。」


芳賀の言葉が脳裏を掠める。


――”アレ”を引き起こしたかもしれない薬。


だが、証明できない、とか言っていた。


「いや、聞いてねぇけど。」


神谷は少しだけ顎を掻く。


「そうか。…まぁ、ちょっと気になって調べてるだけだ。

 鑑識も『何も出ない』つってたしな。」


立ち上がり、踵を返す。


「何か聞いたら教えてくれや。」


それだけ言い残し、ゆっくりと去っていく。

西日がその背を照らしていた。


――”何も出ない”。


その言葉が逆に、妙な引っ掛かっかりを残していた。

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