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空席
試験が終わった教室は、緩慢な空気に満ちていた。
ぽつぽつと帰る者が出る一方で、いくつか輪ができていた。
開放感からか、笑い声が跳ぶ。
―――あれから、一ヶ月。
日々は、何事もなく過ぎていった。
警察も接触してこない。
いや、神谷のおっさんには小言を言われたが、それだけだ。
本当に、何もない。
そう。
――遊馬の転校も、なかった。
アイツはまだ、この学校に籍を置いている。
だが、ここ数日は、その席が空いたままだ。
試験なんて、アイツには関係ないのだろう。
担任は「家の事情だ」と言っていた。
嘘に決まっている。
まだ監視でもされているのか――。
全く気配は感じないが。
事件は終わったはずなのに、胸のモヤモヤは晴れないままだ。
「上角。お前も来ないか」
テンションが高いせいか、珍しく声をかけてきた。
隣の席の新田たちは、明日の予定を話していた。
「わりぃけど、無理。」
「えぇ、付き合い悪いな。」
新田が、残念そうに笑う。
窓の外に視線を戻し、息を吐く。
「バイトなんだよ。」
試験はどうでもいいが、休みがバイトで潰れるのは憂鬱だった。




