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Rouge Noir(ルージュ・ノワール) ー赤い刃と黒い獣ー  作者: GreatGameGlobe
第一章 アンガーアンマネージメント
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憤怒

夜のオフィス。その周りはすでに電気が落ち、誰もいない。

壁の時計は11を過ぎていた。

残っているのは俺と――上司ひとり。


「おい、まだ終わってねぇのかよ。」


後ろから飛んできた書類が頬を打った。

疲れ切った目で振り返る。

ネクタイを緩め、缶コーヒーを啜るその顔には、下卑た笑いが張り付いている。


「お前が終わらねーと、俺も帰れねーんだよ。分かってんのか!」


苛立たし気な声が、頭の中でずっと反響する。


脳の奥で何かが軋む音がした。


――なぜ、俺ばかり。


こいつのせいで。ストレスが――。


こいつのせいで。Esに手を―――。


こいつのせいで。こいつのせいで。こいつのせいで。


こいつのせいで。心が、壊れちまった―――――。


こいつのせいで。こいつのせいで。こいつのせいで。

こいつのせいで。こいつのせいで。こいつのせいで――――――――――


我に返ったとき、手は血に濡れていた。

床に散らばった書類の上で、上司は動かない。

顔の形が、もうわからないほど腫れ上がっていた。


呼吸が荒い。

心臓が破裂しそうだ。

だが、不思議と罪悪感はなかった。

俺は悪くない。当然だ。

悪い奴が死んだ。全然、悪いことじゃない。

代わりに、胸の奥に熱いものが湧き上がる。

それは恐怖でも後悔でもない。

――高揚だった。


その夜、俺は歩き続けた。

何も考えず、街灯の下をふらつく。

手はまだ震えている。

だが、もう何も感じなかった。


コンビニの駐車場で、不良たちがたむろしていた。

バイクのマフラーが喧しく鳴る。

笑い声が、耳に障った。


こいつら何だ。親のすねをかじって、イキがって。

社会のゴミが。偉そうに。

こっちは死ぬ思いして働いてるのに――。


「何、見てんだよ。オッサン?」


その言葉で、視界が真っ赤に染まった。

気づけば一人の首を掴み、アスファルトに叩きつけていた。

骨が砕ける音。

もう一人が殴りかかってきたが、それも殴り返した。

殴るたびに、何かが壊れていく感触があった。

止まらなかった。


気づけば、全員が地面に転がっていた。

周囲には血の匂いと、湿った夜風だけが残っていた。


胸の鼓動が静まっていく。

その代わりに、身体の奥で何かが蠢いた。

皮膚の下を這うような熱。

視界が、赤く、歪む。


――怒りは、止まらない。

止められない。

止める気も起きない。

内側から膨れ上がり、際限がない。



何かが壊れた気がしたが、怒りの前ではどうでもよかった。



――――



その夜から、彼は人間ではなくなった。

それは、名を奪われ、感情に呑まれた存在――

“憤怒”。

一応言っておくと このエピは時系列的には遡っています


で、ここまでで1章終わりです

2章途中までは書いてあるので、もうちょっと毎日投稿続くと思います

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