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見る間に、タニアの眉間にしわが寄る。
タニアの怒りを表すように、湯沸かしがシューッと湯気を吐き出した。
タニアは深呼吸をしてなんとか気持ちを落ち着かせると、少女に向き直りにっこりと微笑む。
しかし、あまり冷静になりきれなかったようだ。
出てきたのは、相手を挑発するような台詞だった。
「セリオは誰かとつるむなんてことはしないみたいよ。そんなことも知らないの? まぁ、あなたみたいに相手の都合も考えず、突然押しかけてくるようなお子様は、セリオが最も避けたくなるタイプだものね」
タニアの言葉に、少女の眉がぴくりと動く。屈辱で顔が赤くなっている。
少女はわなわなと震えながら立ち上がると、タニアに向かって指を突きつけた。
その目は血走っているが、それでもなお美しい顔立ちだ。しかしその表情は、般若のごとく恐ろしいものだった。
「はぁ? 私のどこがお子様だって? しっかり見なさいよ! どう見たって、年頃の貴族令嬢じゃない。あんたみたいな貧相な小娘よりも、よっぽど私の方がセリオ様の隣にふさわしいのよ!」
自分のことを貴族令嬢だというわりに、その言動には品性の欠片も感じられない。
しかし、頭に血が上っているタニアはそんなことに気づくはずもなく、売り言葉に買い言葉とばかりに応戦する。
「アタシのどこが小娘なのよ! 初めての場所で自分勝手に騒ぎ立てるあなたの方が、よほどお子様じゃない! セリオは、あなたみたいな娘、絶対に相手にしないわ」
少女とタニアはしばし睨み合った。しかし、やがて少女はふんっと鼻を鳴らす。
「いいわ。そこまで言うならどちらがセリオ様にふさわしいか、はっきりさせましょう」
「ええ。望むところよ。セリオのことは正直どうでもいいけど、小娘呼ばわりされたままじゃ、アタシも引き下がれない」
タニアは、少女に負けじと鼻息荒くそう言い切った。
少女はそんなタニアを、まるで小馬鹿にするように見やる。
そして、不遜な笑みを浮かべたまま言い放った。
「まぁ、結果はやる前からわかっているけどね。なんたって、セリオ様は私の運命の人だもの」
あまりに自信たっぷりに言い放つ少女。
しかし、タニアはそんな少女の態度を気に留めることなく、それどころか見下すような視線を向けると、面倒くさそうに言い放つ。
「あーそうですか。セリオも大変ね。変な子に付き纏われて。それで、アタシは何をしたらいいわけ?」
タニアの態度が気に入らなかったのか、また少女の目が吊り上がる。




