6-28
「こんにちは。お茶とお菓子しか出せないけど、それでも良ければどうぞ」
接客の際は笑顔を心掛けているタニアとは打って変わって、少女は無表情のままじっとタニアを見つめてくる。造形が美しいだけに、その無表情はどこか人形じみていて少し不気味だった。
タニアは思わずたじろいだが、それでも笑顔を崩さずに少女を店内に招き入れる。
少女は促されるまま、一番端のテーブル席へと腰かけた。そして、誰かを探すように室内をぐるりと見回す。
タニアはそんな少女の様子を不思議に思いながらも、カウンターに戻り、お湯の準備を始めた。
「何かお好みのハーブはあります?」
カウンター越しにそう問いかけても、少女はキョロキョロと室内を見回していて、タニアの言葉には反応しない。
その挙動不審さが容姿に似つかわしくなく、タニアは不信感を覚えた。さりげなく、その動向を見守る。
やがて室内の観察をやめた少女が、タニアに視線を向けた。
「ねぇ」
容姿に相まった可愛らしい声音なのに、どこか冷たい響き。タニアはつい身構えてしまう。
少女はそんなタニアに構うことなく言葉を続けた。
「セリオ様はどこ?」
少女の口調は強い。タニアに向ける視線も何故だか鋭い。
美人が睨むと、ものすごい迫力だ。
タニアは気圧されながらも、なんとか笑みを絶やさずに答えた。
「ここにはアタシ一人だけど?」
しかし少女はタニアの答えに納得しなかったようで、さらに語気を強くする。
「あなた、寝ぼけたことを言ってるんじゃないわよ? セリオ様がここに出入りしていることは分かってるんだから」
(何なのこの娘)
外見に似つかわしくない物言いに、タニアはたじろぐ。
少女はそんなタニアの心情などお構いなしに、さらに語気を強める。
「セリオ様をどこに隠したのよ?」
「か、隠すも何も、本当にここにはアタシしかいないわ」
タニアがそう答えると、少女はキッと目を吊り上げた。
「そう。何が何でも、セリオ様を独り占めしようって腹ね。でも、残念でした」
少女はタニアを小馬鹿にするように鼻で笑うと、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「あなたみたいなお茶を運ぶしか能のない小娘が、セリオ様に本気で相手にされると思ってるの? なんてお目出たい頭なのかしら。セリオ様の隣は、私みたいに有能でなくちゃ歩けないのよ」
少女のその言いぐさに一瞬面食らったタニアだったが、次第に、ふつふつと怒りがわいてきた。
どうして、そんなことを言われなくてはいけないのか。




