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タニアが空になったカップを置いた瞬間、ジャックスがぽりぽりと頬をかきながら、気まずそうに口を開いた。
「お、おい。何をそんな呑気に茶なんて飲んでるんだ。婆さんを追わなくていいのか?」
しかし、タニアは勢い良く手を振った。
「いいのいいの。ばぁちゃんいつも言ってたんだ。アタシがいなければ、また旅に行けるのにって。家族でもないのにアタシ、これまでばぁちゃんに迷惑かけてばっかりだったからさ。本当は、厄介払い出来て喜んでるんじゃない?」
タニアはそこで言葉を区切ると、ジャックスとセリオを交互に見つめる。そして、にっこりと微笑んだ。しかし、その目じりには光るものがあった。
それが強がりであることは、誰の目にも明らかだった。
ジャックスはそんなタニアの様子に大きく息を吐く。
「ハァ。ガキが一体何を遠慮してるんだか。血の繋がりなんかなくたって、お前たちは十分家族だ。少なくとも俺にはそう見えた」
ジャックスの少しぶっきらぼうな言葉に、タニアは一瞬顔を輝かせる。
「そう……かな?」
嬉しさと戸惑いが混ざったような複雑な表情を見せるタニアに、セリオも面倒くさそうに口を開いた。
「きみのことが大事じゃなければ、あんな風に怒鳴り込んではこないさ」
当たり前のことだと言わんばかりにセリオは呆れ顔を見せる。ぶっきらぼうな物言いだったが、その言葉には優しさが満ちていた。
タニアは、そんな二人の顔を交互に見比べ、そして、へにゃりと笑う。
「ばぁちゃんさ、父さんたちと同じで、多分冒険者だったんだと思う」
タニアはノルダの出ていった扉を見つめる。まるでノルダの姿を追うように、その視線は遠くへと向けられていた。
「婆さんが、冒険者?」
タニアの言葉に、ジャックスが興味深げに問いかけた。
「はっきりと聞いたことはないんだけどね。でも、自分の家にいるのに、いつもどこか居心地が悪そうだったの。本当はふらりとどこか遠くに行きたかったんだと思う。でも、アタシがいたから……」
タニアは、そこで一旦言葉を区切る。そして大きく息を吸ってから続けた。
その目に力が籠っている。気持ちに区切りをつけたようだった。
「冒険者は根無し草なんだって、昔、ばぁちゃんに聞いたことがある。自由に過ごしたいんでしょ? だったら、これからはばぁちゃんが望んだように暮らしてくれればいいや。それで時々……本当に時々でいいから、ここに立ち寄ってくれて、元気な顔を見せてくれればそれでいい!」




