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タニアはハッとしたように目を見開くと、そのままノルダに抱きつく。
「ねぇ。このままもう会いに来てくれないなんてことないよね?」
タニアの問いに、ノルダは答えない。そんな空白の時を埋めるように、タニアは畳み掛ける。
「ばあちゃんが顔をみせてくれなくなったら、アタシがばあちゃんちに押し掛けるからね。そんなの迷惑でしょ? ばあちゃん、アタシに家を散らかされるの嫌だもんね」
タニアの必死な様子にノルダは苦笑する。
「ばあちゃんはアタシの入れた山葡萄茶が一番好きでしょ? ね? また、来てくれるよね?」
ノルダがそっとタニアの頭を撫でた。その手つきからは慈しみと深い愛情が感じられる。
「……ああ。もちろんだ。あんたの入れる山葡萄茶ほど美味いものはないからね」
しかし、発せられた言葉とは裏腹に、それはまるで、別れの挨拶のように寂しく聞こえた。
「ばあちゃん」
タニアの震える声が、静まり返った室内にそっと落ちた。
ノルダの表情がほんのわずかに緩む。しかし、すぐにいつもの強気な顔に戻る。
「ったく……なんて顔してんだい」
ノルダはタニアの頬にそっと手を添えた。その手は少し冷たくて、けれどとても優しい。
「タニア。あんたにはもう仲間がいるんだろ。いいかい。仲間ってのは、いつ如何なる時も、信頼で繋がっていなくちゃいかん。あんたが頼るだけじゃなくて、あんたも何があっても相手に信じてもらえるよう、日頃から真っ直ぐに向き合わなきゃいかん。これだけは、肝に銘じておくんだよ」
ノルダの教えに、タニアは何度も頷いた。
「あんたたちもいいね? 何があってもこの子を放り出すんじゃないよ」
ノルダの目がジャックスとセリオを捉える。
その強い視線に、ジャックスもセリオも姿勢を正さずにはいられなかった。
そんな二人の様子にノルダは満足そうに頷く。
「邪魔したね」
そう告げると、ノルダはさっさと出ていってしまった。
閉まった扉の前でタニアは立ち尽くす。
タニアの胸はきゅっと締めつけられるように痛んだ。
心細げに扉を見つめ、それでも涙が溢れまいとぐっと唇を噛む。辛さを噛み殺しているようだった。
やがて、その場をふらりと離れ、テーブルに近づく。
山葡萄茶をなみなみとカップに注ぎ、それを一気に飲み干した。
空になったカップをコトンと置き、タニアはふうと鼻から大きく息をはいた。
「はぁ〜。これのどこが美味しいのよ。酸っぱいったらないわ」
タニアは、何事もなかったかのように悪態をつく。




