6-23
ノルダとジャックスの間に漂う、妙に重たい空気。
セリオはその場を取り成すでもなく、穏やかな笑みを崩さないまま二人の視線の応酬を見守っている。
室内には、シューっという蒸気の音がやけに大きく響いた。
ほどなくして、湯気の立つポットとノルダ用の茶器を盆に載せてタニアが戻ってきた。
「お待たせ。ばあちゃんは、いつもの山葡萄茶でいい?」
そう聞きながらも、タニアはノルダの答えを待たずに、茶器に乾燥した山葡萄の実を数粒入れる。そこに、沸かしたての湯を入れると、湯が見る間に赤く色づいた。
タニアは、甘酸っぱい匂いの湯気が立ち上る茶器をノルダの前にそっと置いた。
ノルダが黙ってお茶に口をつけたことで、ようやく落ち着いたのだと察したタニアの顔には安堵の色が広がった。
しかしすぐに怪訝そうに眉をひそめる。
「ちょっと何? なんか空気重くない? あ、もしかして、まだ疑ってるの? ホントにこの人たちはアタシの仕事仲間なんだって」
タニアがそう言うと、ノルダはフンと鼻を鳴らした。
「こいつらの素性についてはもういい」
先ほどまでの激怒から一転、素っ気ない態度のノルダに、タニアは首を傾げながらも話を続けた。
「ばあちゃんがこれまでいろいろ教えてくれたから、アタシにもできることがあったの」
「……そうかい」
ノルダは素っ気ない態度のまま、黙ってお茶を啜る。その目はどこか優し気で、どこか寂し気だった。
「……厄介ごとだけには気をつけな」
ノルダは、そう小さく呟くと茶器をタニアに返す。
そして、杖を突いてゆっくりと立ち上がった。そのまま扉へ向かっていく。
唐突なノルダの行動にタニアは慌てて、その後を追いかける。
「待って。ばあちゃん。アタシが勝手なことをしたから怒ってるの?」
タニアがノルダの腕を掴む。しかし、ノルダはその手をそっと解いた。
そして、そのまま扉に手をかける。
タニアは不安げな顔で、じっとノルダの後ろ姿を見つめるばかりだ。
そんなタニアにノルダは背を向けたままで静かに告げた。
その口調はひどく穏やかだ。しかし、そこには有無を言わせぬ強さがあった。
「別に、怒っちゃいないよ。あんたももう自分で判断して、自分で行動できる歳だ。アタシの助けなんてもう必要ないだろう?」
ノルダはそこで一度言葉を区切った。
そして、ゆっくりとタニアに向き直る。その目はとても優しげで、タニアのことを心から案じているのが見て取れた。
「自分で始めたことなんだ。しっかりおやり」




