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しかし、興奮を抑えきれないのか杖を持つノルダの手は未だに震えている。
ようやく衝撃から立ち直ったジャックスが頭をかきながら苦笑する。
「おいおい、婆さん。落ち着いてくれ。誰も妙なことなんて……」
「お黙りっ! このデカブツが! 妙なことじゃないって言えるのかい!? こんな娘っ子を男二人で取り囲むなんて、十分妙なことだよっ」
ノルダはジャックスの弁解にピシャリと言い放つ。
その勢いにタニアもセリオもたじろいだ。
ノルダは杖でドンッと床を突き、再び大声を張り上げる。
「この娘に指一本でも触れてみな! アタシが叩きのめしてやる!」
ノルダの鬼気迫る様子に、ジャックスはまた苦笑する。
「おいおい、婆さんよ……。俺はただのプレースメントセンターの職員だ。タニアに変なことなんて」
「だから、なんだってんだい! プレースメントセンターの職員だろうが、国の衛兵だろうが、貴族だろうが、良からぬことをする奴はいるんだよ! 口だけじゃ、アタシャ信用できないね!」
ジャックスの弁明は逆効果だったようだ。ノルダの怒りはどんどん膨らんでいく。
「ぐっ……!」
ジャックスは言葉に詰まり、セリオは「確かに……」と小声で呟いてしまった。
「ちょ、ちょっと待ってノルダばあちゃん! 本当に違うの! この人たちはアタシの仕事仲間で」
「仕事仲間だって?」
ノルダは怪訝な表情で聞き返した。
「さっきこの大男はプレースメントセンターの職員だって言ったじゃないか? え? 仕事仲間ってことは、あんたもプレースメントセンターの関係者になったのかい? そもそもあんたはギルドの受付になりたいと言っていたじゃないか。それはどうなったのさ?」
「だから、ここで……」
ノルダに問われて、タニアが勢いのままに口を開きそうになる。
慌ててセリオが一歩前に出た。そして、ノルダに向かって深々と頭を下げた。
突然のことに、さすがのノルダのトーンも一気に下がる。
「な、何をしている?」
頭を下げたまま動かないセリオに向かって、ノルダは訝しむ。
セリオはゆっくりと顔を上げた。誰もが心を開いてしまう、人好きのするあの笑顔をノルダに向ける。
「ノルダさん。ご挨拶が遅れてしまって申し訳ありません。俺は、セリオと言います。タニアからは両親はいないと聞いておりましたので、まさか、あなたのような親代わりの方がいるとは思わず、大変失礼しました」
セリオの人好きする笑顔と物腰柔らかな口調に、ノルダの毒気がみるみる抜かれていく。




