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セリオは、よほど空腹だったのか、渡された分のパン粥をあっという間に平らげていた。そして、そそくさとおかわりをよそう姿を、タニアは嬉しそうに目を細めて見ていた。
朝食を食べてきたはずのジャックスもおかわりをし、あっという間に鍋が空になった。
食後のお茶を三人で飲んでいるとき、タニアがぽつりと呟く。
「食事って誰かと食べると美味しいのね」
タニアの言葉は少しの間、誰にも拾われなかった。その言葉が宙に溶けて消えかかったころ、ようやくセリオが口を開いた。
「……そうだな。俺も誰かと食べると美味いと思った」
ぽつりと返した声は、しんみりとした空気を誘う。
タニアもセリオも、普段は明るく振る舞っていても、胸の内には孤独を抱えているのだろう。
そんな二人の様子を黙って見ていたジャックスが口を開く。
「なぁに辛気くさい顔してんだ? 食べ終わったなら、さっさと片付けるぞ。俺はそろそろプレースメントセンターに戻らにゃならん」
その言い方はぶっきらぼうなのに、どこか優しい。
タニアは小さく笑った。
「また一緒に……」
そう言いかけたタニアの言葉は、不意の来客によってかき消された。
扉をノックする音が聞こえる。タニアがそれに反応し、扉へ向かう。扉を開けた瞬間、威勢のよい声が飛び込んできた。
「タニア! あんた一体何をしたんだい!」
怒鳴り声とともに、少々年老いた女性がずかずかと入ってきた。
タニアは、その勢いに思わず後ずさる。
女性は、タニアの前に立つと仁王立ちで腕を組んだ。そして、再び同じ言葉を繰り返した。
「あんた一体何をしたんだい!」
その言葉に、タニアは目を白黒させるばかりだ。
「ノ、ノルダばあちゃん!? な、なに? 突然」
「なに、じゃない! 何やら変なことを始めたなと様子を見ておれば、今日は朝から家を締め切ったまま。心配で来てみれば」
ノルダと呼ばれた女性は、大仰にため息を吐いた。そして、ぐるりと部屋を見渡してジャックスとセリオを睨む。
「こんな娘っ子一人の家に、男二人がかりで上がり込むなんて。一体何の用だいっ! 事と次第によっちゃ、アタシャ容赦しないよ」
少し腰の曲がり始めたノルダは、持っていた杖をドンと床についた。
その迫力に、ジャックスとセリオはたじろぐ。
タニアは、慌ててノルダを宥めた。
「ちょ、ちょっとノルダばあちゃん! どうしたのよ! 落ち着いて! この人たちは悪い人じゃないから」
タニアは必死にノルダを宥めようと、両手を広げて二人を庇う。




