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状況を理解したセリオは、ジャックスに向かって頷く。
「では念のために、あの方へ報告に伺った時にでも、予備の魔石もいただいてきますよ」
タニアは、セリオの言っていることがよく分からなかったが、とりあえず、今後この魔道具の魔力について自分が心配することはないということだけはわかった。
「じゃあ、とりあえずこの話は終わりでいい? 朝からなんか疲れちゃったし、アタシ、お茶でも淹れるわ」
そう言って席を立ったタニアは、しばらくすると人数分のお茶と皿、そして少し大きめの鍋を持って戻ってきた。
「セリオは朝食、まだでしょ。アタシもまだだったから。少し多めにあるから、もしよければオジサンもどお?」
タニアは、空いている机にそれらをドンと乗せる。温められたたっぷりのミルクにパンが浸っていた。
「これは、パン粥か?」
鍋を覗き込むジャックスが、興味深そうに尋ねた。鍋から漂うミルクの香りに鼻をひくつかせる。
パン粥とは、長時間煮たミルクに浸したパンのことだ。味付けは、塩や香辛料、砂糖など家庭によって様々。
「そう。ほら、病み上がりじゃないけど、一応……」
タニアはちらりとセリオの顔を見る。あまり胃に負担がかからないようにという配慮のようだ。
そんなタニアの気遣いに、セリオは素直に頷いた。
「へぇ〜、美味そうだな。ありがたい……師匠はどうします?」
セリオが尋ねると、ジャックスも嬉しそうに頷いた。
「俺は朝飯は済んでいるが、せっかくだし、少しもらおう」
「わかった。ちょっと待ってね」
タニアは手際よく鍋をかき混ぜる。すると、ミルクとパンの香りがふわりと漂ってきた。
「じゃあ、いただきます」
皿を受け取った、セリオはパン粥に匙を入れた。
まずはミルクだけを一口飲む。香草が入っているのか、鼻から抜ける香りがスッキリとしている。それなのに飲み込むと体がじんわりと温まるのを感じる。
そのまま二口目の匙を入れる。ミルクをたっぷりと吸ったパンは、とても柔らかくて食べやすい。優しい甘さが口に広がり、思わず顔が綻ぶ。
黙々と食べるセリオの隣で、ジャックスも唸る。
「ほお。うちとはまた違った味だが美味いな。これもハーブ入りなのか?」
ジャックスは、パン粥を一口食べてから尋ねた。
「そう。パンに練り込んであるの。それから、今日はミルクにも少し入れてある」
得意げに答えたタニアは、自分もパン粥を食べ始める。すぐに顔がほころんだ。まずまずの出来に満足しているようだ。




