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そう言い終わると、ジャックスはタニアに向かって魔石を離すよう指示をする。
言われた通り、タニアが魔道具から魔石を離すと、魔力の供給が途絶えたため、魔法陣はスッと消えた。
タニアはしばらくその場で固まっていたが、やがて力が抜けたように椅子へ座り込んだ。物珍しげに通信器を眺め、ふうっと大きなため息を吐く。
「ここにいない人と話せるなんて、すごい魔道具ね」
「それを言ったら、転信器だってそうだ。文書が転送されてくるなんて、びっくりしたよ。さすがは、ジュヴェントゥス様。とんでもないものを開発されたもんだ」
セリオも感心したように息を吐いた。
改めて敬意を払い、魔道具に合掌するセリオを見て、ジャックスは苦笑する。
「いいか。これはまだ数台しか無い貴重な魔道具だ。雑に扱うなよ」
ジャックスの忠告に、タニアは唇を尖らせてみせる。
「もう。子どもじゃないんだから、分かってるわよ。それより、この魔石の充填ってどうすればいいの? 他の生活用魔石と一緒で、街の魔術工房に充填依頼をすればいい?」
タニアは、先ほどジャックスから渡された魔石をテーブルの上に置いた。
魔石は、魔道具を動かす動力源のようなものだ。
例えば、コンロには火属性の簡易魔法陣が、オーブンには風属性と火属性の魔法陣がそれぞれ施されている。それを使用するにはもちろん魔力が必要なのだが、魔力のない者でも必要な属性の魔石さえあればその魔道具を使うことができる。
魔石を利用することは、生活の一部だ。
魔石は、魔力をためることが出来る。ただし、魔石は魔力を放出するだけで、生み出すことはできない。蓄積魔力がなくなった魔石はただの石。使用することができないため、新たな魔力を注がなければならない。
街には、それを生業とした工房があるのだ。
タニアの質問に、ジャックスは首を横に振った。
「いや、これはかなりの魔力消費量らしい。街の工房では、おそらく完全な充填はできないだろう」
「じゃあ、魔力切れになったらどうするのよ? せっかく魔道具があってもいざって時に使えなかったら、意味ないじゃん」
タニアは唇を尖らせる。
その質問は、ジャックスの想定内だったようだ。
「空の魔石は、セリオに持たせろ」
「俺ですか?」
突然話を振られ、セリオは目を瞬かせた。
ジャックスはニヤリと笑う。
「アイツ経由で、嬢ちゃんが充填してくれるそうだ」
「リゼ……オーナー経由? ああ、なるほど。そういうことですか。わかりました」




