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タニアが慌てふためいている間も、魔法陣の光は規則的に点滅を繰り返す。
セリオは見かねて、タニアの手を取り魔石を重ね合わせた。
点滅していた魔法陣がくっきりと浮かび上がる。通信が繋がったようだ。
《こちらはプレースメントセンターです》
先ほどの老齢の男性の声だ。
《こちらプレースメントセンター。聞こえておりますか?》
「ひゃっ……! き、聞こえてるっ!」
思わず反応したタニアの声は裏返った。セリオは吹き出しそうになるのを必死に堪えたが、ジャックスは遠慮なく腹を抱えて笑った。
「ははっ! なんだその声は!」
「う、うるさいなっ! 初めてなんだから仕方ないでしょ!」
タニアが真っ赤になって怒鳴ると、魔法陣の向こうでもくすりと笑う声が聞こえた。
《その声は……もしかして、先日のお嬢さんですかな? いや〜、事件が無事解決して本当に良かったですねぇ》
通信器の向こう側の男性は、心から嬉しそうだ。そのほのぼのとした口調がタニアの緊張を幾分か和らげる。
「えっと……。誰?」
《ああ、これは失礼。私は商業ギルドのギルド長を務めております、オリバー・ランバートと申します。ジャックス君の父ですよ。今日は、ジャックス君から通信番を頼まれました》
そう言えば、先ほどジャックスが通信器に向かって「親父」と言っていたなとタニアは思い至る。
「あの……。アタシは、タニア・ミルコット。あの時は、取り乱してごめんなさい」
通信器に向かって頭を深々と下げるタニアに、魔法陣からのんびりとした声がかけられる。
《いえいえ。むしろ、よく知らせてくれましたね。あなたのとっさの行動が事件の解決に繋がったのです。結果良ければ、全て良しですよ》
魔法陣からはオリバーの朗らかな笑い声が響いている。
《あなたのような元気と判断力のある人は、商売に向いていますよ。気が向いたら、商業ギルドへいらっしゃい。私があなたのサポートをさせていただきますよ》
オリバーの言葉に、タニアは目を瞬かせた。
「あ、でも……」
ギルドの受付嬢だからと口にするわけにもいかず、タニアが言い淀むと、すかさずジャックスが口を挟んだ。
「おいおい親父。何、勧誘しているんだ? 通信確認が出来たから、もう切るぞ」
《おや。ジャックス君。相変わらずそっけないですねぇ》
通信器の向こうでオリバーは残念そうにぼやいているが、その声はどこか楽しそうだ。
「じゃあな。手伝わせて悪かったな。通信はこちらから切るから、そのままで頼む」




