6-15
タニアが驚いて水晶板に飛びついた。
「な、何これっ!」
先ほどまで何も書かれていなかった羊皮紙に文字が記されている。
『通信確認。セリオ、よく戻った。詳細は後日聞く。まずは休め ーーリゼラルブ』
その筆跡を見た瞬間、セリオの胸が熱くなった。
見限られてなどいない。任務を完遂出来なかったことを叱られるどころか、ただただ、自分の無事を気遣ってくれている。
タニアがそっとセリオの横顔を覗き込む。
「休めだって。ちゃんと心配されてるじゃん」
「……ああ」
セリオは小さく息を吐き、微笑んだ。
タニアも嬉しそうに笑い、それからジャックスに向き直る。
「ところでさ、これってどこに繋がっているの? やっぱり、オーナーのところ? ってことは、この『リゼラルブ』って人が、オーナーなの?」
タニアの疑問に、それまで感動に浸っていたセリオが目を剥いた。
「なんて言い方を。この方はなぁ!」
思わずタニアに詰め寄ろうとするセリオを、ジャックスが押し留めた。
「そうだ。だが、この名前はここでは口にするな。どうしてか、わかるな?」
ジャックスの問いにタニアはきょとんとした顔を見せたが、すぐにハッとしたように表情を引き締めた。
「ギルドのことと、オーナーのことについては、知られるわけにはいかないから」
タニアの言葉に、ジャックスは大きく頷いた。
「そうだ。この名前も、この通信のことも、他言無用だ」
タニアは、コクコクと何度も頷いた。
その様子を見たセリオは、頭の熱がスーッと冷めていくのを感じた。勢いに任せてとんでもないことを口にしてしまいそうになっていたことに、今更ながらに気がついた。
そして、改めて羊皮紙を見つめた。
(……俺もまだまだだな)
セリオはふっと息を吐き、転信文の書かれた羊皮紙を大事そうにそっと懐に仕舞い込んだ。
セリオが気を引き締め直している間にも、ジャックスは話を進める。
「それで。転信器だが、基本は使うな」
「はぁ? じゃあ、何のために持ってきたのよ?」
途端にタニアは不満そうに口を尖らせる。
ジャックスもその反応は予想していたのか、特に気にした様子はない。
「アイツは、極度の面倒くさがりでな。お前らから頻繁に連絡が来るのを嫌がる」
「はぁ? 別に意味もなく送ったりしないって」
タニアの不服そうな反応に、ジャックスはニヤリと笑う。
「別に俺も、お前らがむやみにアイツに連絡するとは思っちゃいないさ。だが、これはアイツの性分なんだ。まぁ、分かってやってくれ」




