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「今度はいつ師匠のお宅へ? スイーツ店というのは、どこの店ですか?」
「さ、さぁな。うちの奴とは約束しているのかもしれんが、オレはよく知らん。スイーツ店は……」
セリオの狂気じみた勢いにジャックスがたじろぎながら答えていると、それをタニアが遮った。
「あなた諜報員なのだから、それくらい自分で調べなさいよ。それに、オジサン。女の子のプライバシーをペラペラと言うもんじゃないわ」
眉間に皺をよせて、タニアはジャックスを咎める。
何故だか不機嫌そうなタニアにジャックスとセリオは首を傾げた。
タニアはふんっと鼻を鳴らすと、話題を変えようと、水晶板を指差した。
「それよりも、今はコレよ。魔力転信器だっけ? これって魔道具なのよね? ってことは、魔力のないアタシには使えない物ってことね」
次代を担う賢者などという、大層な肩書きを持つ者が考案した魔道具とあっては、さぞ、複雑な仕組みが施されているに違いない。
そんなタニアの気持ちを察したのか、ジャックスはニヤリと笑った。
「いいや。これは生活用魔道具と同じで、属性の合っている魔石があれば、魔力がないやつでも使えるように作られている」
ジャックスの説明を聞いて、タニアは魔道具を覗き込んだ。
確かに水晶板には魔石を嵌め込む窪みがあった。これならば、魔力充填されている魔石があれば魔力のないタニアでも扱えそうだ。
ジャックスは水晶板を二人の前に押し出した。
「実のところ、これは俺も使ったことがねぇ。だが、問題なく使えるよう設定されているはずだ。試してみろ」
セリオは羊皮紙を一枚取り、さらりと文字を書いた。
『こちらセリオ。通信試験を開始します』
書き終えると、羊皮紙を水晶板の上に置く。
起動はタニアが行う。転信器の窪みに魔石を嵌め込むと、魔石が淡く光り、薄い魔法陣が浮かび上がった。
「わぁ……!」
タニアが感嘆の声を上げている間に、魔法陣は一瞬だけ光を放ち、すぐに消えた。
タニアは水晶板を覗き込んだが、特に変化はない。
通信が成功したのか分からず、顔を見合わせる二人にジャックスが告げた。
「送信完了だ。向こうの装置に届いてるはずだぜ。魔力は発信時に必要らしい。受信には必要ないから、魔石はもう外しておけ。それから、何も書かれていない羊皮紙を水晶板に置いておけ」
二人はジャックスに言われるままわたわたと作業する。
しばらくすると、水晶板に勝手に魔法陣が浮かび上がりカッと強い光を放つと、静かに消えた。




