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「まぁ、どちらも出回っていない代物だからな。知らんのも無理はない」
ジャックスは水晶板を指で軽く叩きながら、得意げに続けた。
「これはな、魔力転信器。遠く離れた相手と文字をやり取りできる。羊皮紙に書いた内容を、この水晶板が読み取って、もう一つの装置に送る仕組みになってるらしい」
「えっ、そんなことができるの?」
タニアは目を丸くし、セリオは思わず身を乗り出した。
「も、もしかしてこれは、ジュヴェントゥス様が考案された物ではっ!? ここ、この紋章。ジュヴェントゥス様のものですよね?」
セリオの食いつき様に、ジャックスは苦笑した。
「おお、よくわかったな。そう、あの嬢ちゃんが作った魔道具だ」
ジャックスの言葉を聞いて、セリオの興奮がまた一段上がった。
そんなセリオをよそに、タニアは別のことが気になった。
ジュヴェントゥスというのは、1年ほど前にある少女に与えられた称号。次世代を担う賢者様の就任には、街が大いに湧いた。
そんな称号持ち様のことを、ジャックスは“嬢ちゃん”と言ったのだ。
「ね、ねぇ。ジュヴェントゥス様って、もしかして、あの魔女のジュヴェントゥス様のことを言っている?」
タニアは、恐る恐る尋ねた。
しかし、ジャックスから返ってきたのは、あっけらかんとした答えだった。
「ああ。そうだ。ジュヴェントゥス・スヴァルトのことだ」
タニアは思わず目を瞬く。
「え〜っ! オジサンってば、ジュヴェントゥス様と知り合いなの!? しかも、『嬢ちゃん』呼びとかしちゃって。大丈夫なの? 怒られない?」
タニアの慌てふためく様子に、ジャックスは豪快に笑う。
「怒られるもんか。俺は、嬢ちゃんが称号持ちになる前からの知り合いなんだ」
ジャックスの言葉を聞いて、セリオも身を乗り出した。
「し、師匠は、ジュヴェントゥス様にお会いしたことがあるのですか?!」
セリオの食いつきように、ジャックスはまたも苦笑した。
「なんだ? お前は、会ったことがないのか?」
「ないですよ! あの方は、滅多に工房から出てこられないじゃないですか! 支給される水薬がジュヴェントゥス様精製になってから、随分と効きが良くなったので、いつかお礼申し上げたいと思っているのです」
セリオの言葉に、ジャックスはきょとんとする。
「いやまぁ、忙しそうだが。時々うちに顔を出すぞ。それから、街のスイーツ店にも」
そんなジャックスの言葉は、セリオには寝耳に水だったようだ。ずいっとジャックスへ詰め寄る。




