店長、給料明細がこの世の理から外れる。
――翌日。
Midnight Mart 王都支店。
レジ裏の休憩スペースに、白い封筒が置かれていた。
ユウト
「……給料明細?」
リゼリア
「“労働の対価”ですね」
アリシア王女
「報酬……!
戦の後の褒美……!」
ユウト
「いや普通のバイトです!」
ユウトは封筒を開く。
【ユウト】
・基本給
・深夜手当
・異界対応手当
・精神的苦痛補填
ユウト
「最後なに!?」
老人
「妥当じゃな」
ユウト
「妥当扱いしないで!!」
――次。
【リゼリア】
・補佐業務手当
・魔力抑制手当
リゼリア
「……なぜ
抑制されている前提なのですか」
ユウト
「してください!!
ぜひ抑制してください!!」
――次。
【アリシア王女】
・臨時警備
・王族特別枠
アリシア王女
「……これは
国に報告していいのか……?」
ユウト
「ダメに決まってます!!」
――最後。
【店長】
全員、息を呑む。
ユウト
「……」
明細には、こう書かれていた。
・出勤日数:不明
・労働時間:観測不能
・業務内容:説明不可
・支給額:調整中
ユウト
「調整中!?」
リゼリア
「未確定概念……」
老人
「数値化を拒んでおる……」
そのとき。
店長が現れる。
相変わらず目の下にクマ。
店長
「……あー……
今月……
出てる?」
ユウト
「聞く側じゃなくて
答える側ですよね!?」
店長
「そっか……
じゃあ……」
封筒を指でトントン。
店長
「……そのうち
まとめて……」
ユウト
「一番怖いやつ!!」
アリシア王女
「国庫より
曖昧だ……」
店長は缶コーヒーを開ける。
店長
「……まあ
生きてるし……
いっか……」
ユウト
「給料の話ですよ!!」
店長は何事もなかったように
バックヤードへ消えた。
沈黙。
ユウト
「……この店……
働いた分だけじゃなくて
存在した分だけ
給料がズレていく……」
蛍光灯が、静かに明滅する。
Midnight Mart 王都支店――
今日もまた、
労働基準法が異世界に置き去りにされた。




