全員ツッコむ日 ― 店長という災害 ―
開店10分後。
店長はレジに立ったまま、
バーコードリーダーを耳に当てていた。
ピッ。
店長「……聞こえないな」
ユウト
「それ電話じゃないです!!」
店長「え、あぁ……」
次の瞬間、
商品をスキャンせずに空中をピッ。
ピッ。ピッ。
ユウト
「 商品そこにありません!!
概念を売らないでください!!」
店長「……概念、売れない?」
リゼリア
「売れません!!
異界でも売れません!!」
アリシア王女
「そもそもそれは武器ではない!!」
老人
「老眼でも分かる!!」
店長は一息つき、
缶コーヒーを開けようとして──
すでに開いていた缶を、もう一度開けた。
プシュッ(何も起きない)
店長
「……今の、時間ずれてない?」
ユウト
「あなたの認識だけです!!」
そのまま店長、
レジ横の床に座り込む。
店長
「……ここ、我が家?」
ユウト
「だったらもっと散らかってます!!」
リゼリア
「むしろ異界より危険です!!」
アリシア王女
「王城より安い賃金で命を削る場所!!」
老人
「帰れ!!」
全員で叫んだ。
店長は静かに立ち上がり、
深刻そうな顔で言った。
店長
「……わかった」
一同、息を呑む。
店長
「今日の俺、
何もしてないほうがマシだな」
ユウト
「自覚はあるんですね!?」
店長
「ある。
だから──」
レジ裏の椅子に座り、
店長
「……任せた」
即・気絶。
ユウト
「放棄が早すぎる!!」
リゼリア
「判断だけは賢明!!」
アリシア王女
「王国でも即刻更迭だ!!」
老人
「だが生き延びた!!」
蛍光灯がチカッと瞬いた。
Midnight Mart 王都支店。
今日も世界は救われなかったが、
店長は守られた。
――主に、ツッコミによって。




