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店長、何も知らないのに最強

翌朝――

正確には昼過ぎ。

Midnight Mart 王都支店・休憩室。

ユウトはソファに沈み込み、魂が半分抜けた顔をしていた。

ユウト

「……昨日のこと……  夢じゃないよな……」

床は直っている。

棚も元通り。

世界の危機があった痕跡は、ひとつもない。

あるのは――

「……ふぁぁ……」

紙袋を抱え、寝ぼけた顔で現れた男。

店長である。

ユウト

「店長……  あの……  覚えてます? 昨日……」

店長

「……昨日……?」

ユウト

「異世界……  王女様……  名の王……  世界の命運……」

店長は少し考えてから言った。

「……あー……  なんか……  眩しかった……」

ユウト

「そこだけ!?!?」

その瞬間。

裏口の空気が、ひそっと歪んだ。

リゼリアが慌てて現れる。

リゼリア

「ユウト殿!!  大変です!!  王国評議会が――」

店長

「……いらっしゃい……」

リゼリア

「……っ!?」

リゼリア、硬直。

(この気配……  魔力が“無”……  だが、それ故に……底が見えぬ……)

アリシア王女も続いて現れる。

「店長殿!!  本日は正式に――」

店長

「……コーヒー……  飲む……?」

王女

「……いただきます」

ユウト

「飲むんだ!?」

王女が缶コーヒーを受け取った瞬間。

――ピシッ。

空間に細い亀裂が走る。

老人

「来たか……!」

影が、わずかに滲み出す。

リゼリア

「影界の残滓……!  昨日の戦いで逃げ残ったものです!!」

ユウト

「まだ終わってなかったの!?」

影はゆっくりと形を取り――

店長の背後へと忍び寄る。

アリシア王女

「店長殿!後ろ――!」

店長

「……?」

影が、店長の影と重なった――

次の瞬間。

影が、ズルッと崩れた。

まるで、力の入らないスライムのように。

「……ぁ……?」

老人

「な……何が起きた……?」

リゼリア

「影が……  “居心地が悪そう”にしている……」

影は震え、逃げようとする。

店長

「……あー……  そこ……  立ち入り禁止……」

「!!?」

影が、悲鳴をあげて消えた。

ユウト

「今の何!?  魔法!?  圧!?  威圧!?」

店長

「……いや……  張り紙……  見えなかったから……」

リゼリア(震え声)

「“世界の理”を  コンビニルールで上書き……!?」

老人

「名の王が恐れた理由が……  今、はっきりした……」

ユウト

「理由にしないで!!」

店長は紙袋からパンを取り出し、かじりながら言う。

「……異世界とか……  よく分かんないけど……」

全員、固唾をのむ。

「……うちの店で……  変なこと……  しないでほしい……」

――ドン。

その一言で、裏口が完全に沈黙した。

魔力ゼロ。

揺らぎゼロ。

名の気配ゼロ。

アリシア王女

「……世界が……  “従いました”……」

ユウト

「世界、素直すぎる!!」

店長はあくびをする。

「……じゃ……  俺……  寝るから……」

リゼリア

「お、お休みなさい……」

王女

「どうか良い夢を……」

老人

「……我らは……  とんでもない存在の店で……  買い物をしていたようじゃ……」

店長はそのまま仮眠室へ。

――三秒後。

スゥ……スゥ……。

ユウト

「……ねぇ……  この人が本気出したら……  どうなるの……?」

リゼリア

「……世界が“閉店”します」

ユウト

「やめて!!!!」

蛍光灯が、いつも通りに点灯する。

Midnight Mart 王都支店――

最強の守護者は、今日も無自覚で寝ている。

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