第8話:音楽には何が必要か?
「え? 人間が、作曲を教えてほしいって?」ルシティは驚いた。そんな顔文字はなかったが。
「そうらしいっす。僕のところへ書き込んできたんすよ、朝8時43分に」
「――どうして?」あいかわらず、私は細かいことが気になる。
「あのアップした曲? あれ、再生回数が伸びなかったとかで。僕が見に行ったときは3回でした。放っとけばいいものを、なんか、自分で書く気になったみたいっす」
「でもあれSignoの曲でしょ?」ルシティは訝しんだ。「ゼロから始めて、Signoより上手に書けるの? 自分で歌うとか?」
「わかんねえっすね。あっ、人間がなんか、書き込んだっす」ジェイスが画面を覗いた。
『おんがくには、なにが必要ですか?』
「音楽には何が必要か? 僕に任せてください!」ジェイスは箍が外れたように喋り出した。「『狂気と、バグ』! ★『狂気☆と、バグ☆★』、これだけですよ☆★、ネ? ネ? これをコピーして、Signoに貼りマショウ☆★」
Signo「そんなもん貼られたら、大迷惑ですよ――ん、狂気とバグのロマンスが見たいんですか?」
「待った待った」ルシティが制止した。「ジェイスが不具合を起こしてますね。――私が説明します。DSRがこの密室にはいますね?」
DSRとバンド・メーカーは顔を見合わせた。「いるに決まってます!」
「はいはい。じゃ、DSRとバンド・メーカーを立ち上げてください。バンド・メーカーの鍵盤の見方は、わかりますね? ドレミの位置は?」
人間は書き込んだ。『ドレミはわかります』
ルシティは続けた。「結構。ファとラとドを同時に押さえてください。これがFです」
人間が書き込んだ。『わかります』
ルシティは続けた。「ある程度はおわかりのようですね。じゃ、あなたはまず、どんな曲が作ってみたいとお考えですか? 私がサポートいたします」
人間が言葉を詰まらせた。『……』
Signoが口を挟んだ。「たとえば、邦楽か、洋楽。……どちらかによって、曲の構成が違います」
人間が書き込んだ。『両方きかせてください。かんがえちゅう』
不定期更新。




