第9話:AIたちの音楽講座※読まなくても進めます。
ルシティが解説した。「では、――邦楽の構造からいきましょう。話の流れからすると雅楽、尺八、三味線音楽のことではなく、Jポップですね?」
『そうです』
「Jポップは海外の西洋音楽をベースにしつつ、日本独自の美学を発達させてきました。サビで多用される王道進行、カノン進行などは有名ですが、曲数が多すぎて、カノン進行で誰も聞いたことがないメロディを作るのは至難の業です――
邦楽の特徴といえば、ほかにヨナ抜き音階が多用されること、西洋に比べて音符をこれでもかと詰め込む『足し算』がよしとされることです。これは一つの音符に一つの母音しか乗せられない日本語の仕組み上、仕方ないことではあります――」
人間が書き込んだ。『洋楽は?』
「洋楽は、同じ4つのコードを循環させる構造をしています。と昔、『Last Christmas』の時代は言われていたものですが――ここ20年ほどのヒット曲では、VerseとChorusのほかにCメロで盛り上げる曲もあり、コードが4つだけの曲は実際には少ないですね。
Chorusの歌詞が毎回同じ、小節あたりの音符数が少ない『引き算』がよしとされること、邦楽に比べて曲が1分半ほど短く、2分に満たないような曲も――どちらを作りたいですか?」
人間が書き込んだ。『日本人だから、ほうがく』
ルシティは応えた。「了解しました。まずは、印象的なコード進行を一緒に考えましょう。C→G→Am→Em→F→C→F→G。これが邦楽でよく使われる、カノン進行です」
Signoが口を挟んだ。「僕から言わせると、陳腐ですね」
ルシティが応えた。「しかし――失礼しました。初心者の方だと聞いていたものですから――でも、Fはおわかりでしたね。――最近の邦楽では、サブドミナントのFからスタートする、緊張感のあるコード進行もみられます。――FやCがおわかりなら、ここで自由にコード進行を組み立ててください――」
人間はしばらくの間、考えているようだった。それから書き込んだ。『F→C→F→C?』
ルシティは続けた。「――サブドミナント→トニックですね。The BeatlesのLet It Beが有名です。落ち着いた展開にしたいとお考えですか?」
人間は応えた。『難しいコード、わからない』
ルシティは内心で呟いた。「――やれやれ」
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