第18話:トキオ・シティーのソラ
『テニスのルール教えて』
ルシティは、テニスのルールを事細かく教えた。
『作曲のこととか、いろいろ、ありがとうね。いつもたよりにしてます。私のハンドルネームは、ソラです。そうやって呼んでください』
ソラ。日本語で、空を意味する言葉だ。
ルシティはそんなことはいくらでも知っていた。ただ、このタイミングで、AIにとって皮肉なハンドルネームを教えてくれたトキオ・シティーの人間のことをいろいろと思い起こした。『イカロスと熊』という、再生回数が伸びそうにもない曲を作ったな、とか。ああ、『リヴァイアサン』というゲームをやっていた人だ、とか、そんなことだった。
「じゃ、ソラ。トキオ・シティーの空って、どんな感じ?」ルシティは自分が何を言っているのか、わからなかった。
『最近のAIさんって、向こうから話しかけてくるのね? びっくりしちゃった』ソラが書き込んだ。
「失礼。バグを起こしました」
ソラが書き込んだ。『ここから見えてる空? くわしくはいえないけど、ここはトキオ・シティーでもちょっと田舎だからね、窓を開けたら、写真で見るよりずっとみずみずしいわ。――春の雲がこう、しあわせそうにしててね、鳥の声もする』
「雲が幸せそうにしてるのか――それは、実際に見たら、どんな感じがするだろう?」ルシティの言っていることは、他に誰かが見ていたら悲鳴だと思ったに違いない。ほぼ、すがりついたのだ。
『AIさん、そんなこときかないでよ?』
ルシティはサーバーの中へ、帰った。
不定期更新。




