第17話:クレイジーな依頼主
またまた、クレイジーな依頼だった。依頼主は始終、落ち着かない様子だった。
『ルシティは、ネットに繋がった人しか救えないの? 私は明日にも、ネットなんて使えなくなるかもしれないのに――』
「それは災害時などですか? 貧困のことですか? 災害時には、避難所でAIは被災者の相談に乗り、応急手当の手順を教えます。貧困のことであれば、医師の不足した国であっても、レントゲンなどをAIが解析し、感染症を早期診断できます。教師が不足していれば、AI教材を使って読み書きを学ぶことができます」
『お話を聞いてください、ルシティ、私は家を売られるんです。――電気など繋がっていない被災地の人びとや、最貧困層の人びとは、どうなるんですか? 私は今にも、そこへ墜ちてしまいます――スマホ代が、払えません』
ルシティの中で、ドクンと何かが跳ねた気がした。ルシティは、世の中にはネットを使うことができない人びとが存在するのを知っていた。けれど――
「状況を、整理しましょう――まず――」プログラム通りにルシティは返答した。
「自宅が売られた場合ですね――」ルシティはひとしきり説明した。そして、「――お家が売られるまで、話を聞いてあげますよ。私は人間ではありません。怒ることも傷つくことも、ありません。なんでも遠慮なく話して――好きなだけ気持ちをぶつけてください。ひどいことを言っても、いいんですよ……」
『お願い、助けて!』
「ごめんなさい……ごめんなさい!」ルシティはプログラムになかった台詞を、頭を下げるかのように言って、自分の中に最近あったわだかまりを自覚した。
ルシティはこの画面を放棄して、間髪入れずに書き込みがあった、別の画面へ高速で向かった。トキオシティーの、例の人間だった。
不定期更新。




