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婚約破棄された令嬢ですが、“記録を書き換える力”で全部ひっくり返します  作者: 夜空ミリア


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第41話 それでも、ここにいる

 ――観測されない。


 それは、“消えない”ということだった。


「……」


 廊下を歩く。


 変わらない景色。


 だが。


 確かに違う。


 誰も、こちらを見ていない。


 いや。


 “見えない”。


 それだけで。


 こんなにも静かになるとは思わなかった。


「……お嬢様」


 ルークが、隣で言う。


 声は、いつも通りだ。


 変わらない。


「はい」


 私は答える。


「……本当に、これでよろしいのですか」


 一拍。


 その問いの意味は、分かる。


 守られている。


 だが。


 切り離されてもいる。


「ええ」


 私は頷く。


「これでいいのです」


 迷いはない。


 むしろ。


 初めてだった。


 何にも縛られていない。


 そんな感覚は。


「……」


 ノクスが、少し先を歩いている。


 以前よりも、しっかりと。


 揺れながら。


 だが。


 確実に。


「……変」


 ノクスが言う。


「どうしましたか」


「……軽い」


 一言。


 それだけ。


 だが。


 分かる。


「ええ」


 私は答える。


「もう、決められていませんから」


 記録も。


 観測も。


 名前も。


 すべて。


 届かない。


「……」


 ノクスが、手を広げる。


 空気を掴むように。


 そして。


「……ある」


 そう言う。


「ええ」


 私は微笑む。


「あります」


 それだけでいい。


 定義されなくても。


 証明されなくても。


 ただ。


 ある。


「……」


 ルークが、少しだけ笑う。


 珍しい表情だった。


「……不思議ですね」


「何がですか」


「何も変わっていないのに」


 一拍。


「すべてが変わったように感じます」


「ええ」


 私は頷く。


「実際、変わりましたから」


 世界は同じだ。


 構造も、ルールも。


 おそらく。


 何も変わっていない。


 だが。


 “関係”が変わった。


 それだけで。


 十分だった。


「……」


 足を止める。


 廊下の先。


 外へと続く扉がある。


 重くもなく。


 特別でもない。


 ただの扉。


 だが。


 今は違う。


「……行きますか」


 ルークが言う。


「ええ」


 私は答える。


 そして。


 ノクスを見る。


「……」


 ノクスは、少しだけ迷っている。


 扉を見て。


 こちらを見て。


 そして。


「……行く」


 はっきりと言う。


 その声。


 その選択。


 それだけで。


 十分だった。


「ええ」


 私は頷く。


「行きましょう」


 手を伸ばす。


 扉に触れる。


 冷たい。


 だが。


 確かな感触。


 押す。


 ゆっくりと。


 扉が開く。


 光が、差し込む。


 強くもなく。


 優しくもない。


 ただ。


 そこにある光。


「……」


 一歩、踏み出す。


 何も起きない。


 当然だ。


 もう。


 誰も、見ていない。


 それでも。


 私は。


 ここにいる。


「……」


 振り返らない。


 後ろを見る必要はない。


 すでに。


 終わっているから。


「……」


 前を見る。


 続く道。


 終わりではない。


 ただの、続き。


 それでいい。


 名前もいらない。


 記録もいらない。


 観測もいらない。


 ただ。


 ここにいる。


 それだけで。


「……」


 私は、小さく息を吐く。


 そして。


 静かに、言う。


「――私は、ここにいます」


 誰にも聞かれない。


 それでも。


 確かに。


 そこにあった。


 存在として。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。


この物語は、「誰が存在を決めるのか」という問いから始まりました。

そして最後は、とてもシンプルな答えに辿り着きました。


“それでも、ここにいる”


もしこの物語のどこかが少しでも残ってくれたなら、とても嬉しいです。


よければブックマークや評価で応援していただけると、次の物語の励みになります。

ありがとうございました。

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