第22章 監視強化
翌朝、施設の空気は一変していた。
廊下には普段見かけない職員が立ち、要所ごとに視線を光らせている。
食堂でも自由に席を移動することができず、志願者たちは半ば監視下に置かれているのが明らかだった。
悟は落ち着かない様子で食器をいじり、翔子は下を向いたまま箸を動かせずにいた。
光輝が小声で言う。
「……完全に目を付けられてる。昨日のセンサー反応、やっぱり誤魔化しきれなかったな」
悟は頷きながらも、周囲の耳を警戒して言葉を飲み込んだ。
昼過ぎ、看護師の荒川澄江が翔子を呼び止めた。
「最近、夜更かししていませんか?」
穏やかな声だったが、眼差しは鋭く光っていた。
翔子は一瞬息を呑み、「……眠れなくて」とだけ答えた。
荒川は微笑みを浮かべたまま、低く囁いた。
「無理に隠さなくてもいいんですよ。ここでは、皆さん同じ道を歩むのですから」
その言葉は慰めではなく、警告として響いた。
一方、川添は誠を呼び出し、中庭のベンチで向き合った。
「昨夜、地下に誰かが入った形跡がある。……あなたではありませんか?」
川添の声は淡々としていたが、目は誠の一挙手一投足を逃さなかった。
誠は煙草を指に挟み、短く息を吐いた。
「探偵は嘘をつかない……とでも言いたいところだが、時には沈黙が最善だ」
川添はしばし誠を見つめ、やがて小さく首を振った。
「あなた方は、もう戻れないでしょうね」
夜になると、志願者たちは再び集まった。
光輝が苛立ちを隠さず口を開いた。
「職員ども、完全に俺たちを監視してる。次に動けば確実に捕まるぞ」
正弘は低く唸り、拳を握った。
「だが、美咲を守るには行動しかない。見つかった時点で俺たちも処分対象だ」
翔子が震える声で言った。
「もし捕まったら……私たちもあの箱に?」
悟は彼女の肩に手を置き、強く頷いた。
「だからこそ、俺たちは絶対に捕まらない」
誠は全員を見渡し、慎重に言葉を選んだ。
「職員の中には揺れている者もいる。川添や荒川……彼らは完全に敵と決まったわけじゃない。
内部の分裂を突ければ、まだ道はある」
光輝が眉をひそめた。
「信用できるのか?」
誠は淡々と答えた。
「信用はできない。だが利用はできる」
その夜、施設の監視カメラは不自然なほど多くの赤いランプを灯していた。
まるで「お前たちを見ている」と告げるかのように。
志願者たちは胸の奥に重い恐怖を抱えながらも、次の一手を探さずにはいられなかった。
――生き延びるために。真実を暴くために。




