第21章 囚われの証言
翌日の昼、六人は誠の部屋に身を寄せていた。
ベッドの上には、昨夜救い出した若い女性が横たわっている。顔色は青白く、声もかすれていたが、その瞳には必死の光が宿っていた。
「……ありがとう……助けて、くれて……」
弘子がそっと手を握り、水を口元に運んだ。
誠が慎重に問いかける。
「君の名前を、聞いてもいいか?」
女性は弱々しく唇を動かした。
「……美咲……杉山、美咲……」
その名に、翔子が大きく目を見開いた。
「杉山……? 私と同じ……」
誠は依頼人から預かった写真を取り出し、彼女の顔に重ねて見せた。
「やはり……君が依頼人の娘さんだな」
美咲は小さく頷き、そして途切れ途切れに語り始めた。
「ここは……死を望む人を……“商品”にしてる……。安楽死は……表向きだけ。本当は……薬を弱くして、まだ息のある人を……箱に入れて……」
言葉が詰まり、咳き込む。翔子が背をさすった。
光輝が険しい表情で身を乗り出す。
「生きたまま……搬送してるってことか? 何のために」
美咲は苦しげに首を振った。
「……分からない。でも……“提供先”があるって……聞いた」
沈黙が落ちた。
正弘が低く呟く。
「提供先……臓器か、実験か……」
弘子が顔を覆い、震える声を漏らした。
「人を……ただの資源として扱ってるのね」
悟は拳を握りしめた。
「そんなの……絶対に許せない」
誠は冷静にノートを開き、断片的な言葉を記録していった。
「つまり、この施設は“安楽死施設”を装った、人体供給の中継地……」
彼の声には探偵としての冷徹さがあったが、その指先はわずかに震えていた。
翔子は美咲の手を握りしめ、必死に問いかけた。
「どうしてあなたは……まだ生きてたの?」
美咲は微かに笑った。
「……きっと、運がよかっただけ……薬が弱かった……」
やがて彼女は力尽きるように瞼を閉じた。呼吸は浅いが、まだ確かに生きている。
弘子が毛布をかけ、静かに言った。
「この子を守らなきゃ。私たちが」
誠は全員を見渡し、低く告げた。
「彼女の存在は決定的な証拠だ。だが同時に、最も狙われるだろう。俺たちは今夜から完全に監視の対象になる」
光輝が唇を噛みしめた。
「……もう引き返せないな」
部屋に漂う緊張感は、死を望んで集まったはずの彼らを、むしろ“生き延びるための同志”へと変えていった。




