第31話 奇談散歩【84】名の知れざる怪しき獣二疋
≪ジェヴォーダンの獣 ( 仏: La bête du Gévaudan ) は、18世紀 ( 1764 ~ 1767 ) に、フランス・ジェヴォーダン地方 ( 現在はロゼール県の一部 ) マルジュリド山地周辺に現れたオオカミに似た獣で、襲われた被害者は60人から100人に上る。獣の正体は今にいたるも不明。≫
この『ジェヴォーダンの獣』に似た『本木村の獣』という妖獣譚が日本にもありました。
「日本妖怪史」に因れば、
延宝八年( 1680 )頃から筑前国宗像郡本木村 ( 現・宗像市付近 ) に怪しい妖獣二疋が夜な夜な出現し、15年に亘って近隣村民を恐怖に陥れたという奇談で ――
延宝八年頃より、本木村では、村内の女人が懐妊し異形の嬰児を出産後亡くなるという異常出産の報告が相次いだ。ほどなく、この事件は人に化けて女人の元に通う妖しの仕業と判明し、村では寝ずの番を立て番犬を周囲に放ったが、この獣はそれらを搔い潜り、村内を徘徊。その後も村の女人が奇怪な嬰児を出産して亡くなるという事件は続いた。化け猫、狐狸の仕業とも噂が囁かれたがその正体は判然としない。
貞享二年( 1685 )にはこの噂を耳にした藩主から ※1 名犬二頭が派遣され、激闘の末に妖しを追い払って以後は現れなくなり、その後、※2 猟師が山中で猪鹿や狐狸・猯狢とは異なる未知の生物の死骸を発見し、これが本木村に現れた妖しき獣であるとされ、事件は終息を迎えた。
※1 福岡藩主が最初に武士二人を派遣したが思うような成果が上がらず、後年床下から妖獣の死体が発見された。
と伝わるものもある、
※2『筑前国続風土記』に詳述される他、写本・絵巻・庄屋の報告書写し等が現存している。獣の最期については諸説あるが、元禄七年(1694)に、この怪異は終息し、元禄十二年に床下からこの獣の骨が出土したという。
また幕末頃に描かれた妖怪絵巻『怪奇談絵詞』では、この怪異を「名の知れざる怪しき獣二疋」という鋭い牙を持つ黒い怪獣二頭の姿で紹介しており、併せて手拭をかぶった二股尾の猫も描かれている。
【 ジェヴォーダンの獣 】
1764年6月、農作業中の少女に目撃されて以来、16歳以下の男性を39人、女性79人、性別不明12人を殺害したと伝わる。目撃者証言に因ると、子牛程の大きさで動きは俊敏、全身が剛毛で覆われた狼のような外観で、鋭い鉤爪と牙、ライオンのような尾を持ち、面立ちはグレイハウンドのようであったという。
ルイ15世が何度か討伐隊を派遣し、1767年に地元の猟師がジェヴォーダンの獣を射殺して事件は収束したとされる。
その正体は諸説あり『オオカミ説』や『ハイエナ説』、『人間 ( 人狼 ) 説』
あるいは、この手の伝承に有りがちな『陰謀説』( 獣には飼い主がいた、事件に関与? )が挙げられる。




