第25話 都市伝説・むらさきばばあ
小学校の御手洗いに現れる、全身紫尽くめの老婆。
トイレの花子さんと双璧をなす御手洗い怪異の定番。
全身紫色の着物を着た老婆、あるいは顔色が紫に見えるほど蒼褪めた老婆で、老婆の容姿は「髪が腰に届くほど長い」「紫の着物」「唇が紫、あるいは紫の口紅をつけている」「爪が長く、目撃者を引っ掻く」と伝わっている。
何故、紫なのかは不明。
出現方法は定まっておらず、他の御手洗い怪異の様にドアをノックをして出現させるという説、突然出現して目撃者を驚かせる説がある。東京都東久留米市では、御手洗いの鏡から出て来る等といわれる。
襲われたものは、臓器 ( おもに肝臓? ) を奪われる、あるいは、何処かに連れ去られるといわれるが、それ以外に「不用意に呼んだ子供たちの足を取る」という派生もある。紫色のアイテムを持って「ムラサキ」と唱える、あるいは「ムラサキ、ムラサキ、ムラサキ」と三回唱えれば退散できるという。
正体には諸説あり、ポプラ社の学校の怪談シリーズ第2巻『放課後のトイレはおばけがいっぱい』に因ると、≪ 貧しい家の少女が、裕福な地主の娘が落とした高価な紫色の着物を拾い、ふと羽織ろうとしたのを見とがめられ泥棒呼ばわりされ、汚名を着せられたまま年老いて亡くなり、後に怪異となった。≫ とされている。
紫色は高貴な色とされ染料が珍重される一方で、死者の顔、唇の色が ※チアノーゼで青紫に変化することから、死を連想する不吉な色とされる側面があり、また、黄昏に空が暗紫に暮れて夜になっていく時刻、逢魔が時は生と死の境界の時間であり、境界に怪異・妖怪が出現するのは、お約束なので「むらさきばばあ」が紫なのはこのような理由から ? … かも、しれません。
他にも「ムラサキ」といえば、有名な都市伝説「ムラサキカガミ」があり、これも「死」の臭いがする都市伝説ですね。
※ チアノーゼとは血液中の酸素不足が原因で唇や指先などの皮膚や粘膜が青紫色に変化する症状。血液の成分の一つであるヘモグロビンには鉄が多く含まれており、これに酸素が結合すると血液が赤くなる( 酸 化 )。しかし、酸素と結合していないヘモグロビン( 還元ヘモグロビン )は青紫色をしており、その割合が増えることで皮膚や粘膜は青紫色になる。
「ばばあ」が続いております ―――
以前も「人のなれ果てとしての鬼」が興味深かったので『安達ケ原』や『黒塚』などの「鬼婆」さま達を調べてまとめたのですが、
( 小耳袋 其之壱にまとめています )
それにつけても、
都市伝説・妖怪・怪異譚の「ばばあ」率の高いこと高いこと、
言わずもがなの殿堂入り都市伝説「ターボババア」やら、高名な妖怪「砂かけ婆」「古庫裏婆」「蛇骨婆」etc etc …
有名どころ以外にも各地に「ご当地怪異ばばあ」みたいな婆さま が いらっしゃってですね、
栃木の「コメトギババサマ」薬師様の側にいて ≪ 米とぎ婆さま晩方さあらさら。薬師様さあらさら。子供さろべとさあらさら。≫ と米を磨いている。… という「小豆洗い」の亜種の様な怪異なんですが、この婆さま、歌を口ずさみながらご飯の用意をしている朗らか婆さま なのでは?
「みそなめぢぢい」「みそなめばばあ」に至っては、もはや味噌屋の老夫婦なのでは? しかも、名前が「みそなめぢぢい」「みそなめばばあ」なのに、≪ 前を馬で通る者を「ほうり田」と呼ばれる田んぼにほうり込んでいた。≫ とか、意味不明すぎて、わからん …
怪異ばばあ道、奥が深すぎる。
あと、「むらさきばばあ」の元ネタのひとつに、前回の「比叡山のなすびばばあ」があるんじゃなかろうか? と思ったりします。
筆者の通っていた小学校にも「便所ばばあ」という怪異がありました。
ひどいネーミングなんですけども ……
校舎建て替えの時に撤去されて今は無い、校庭の端っこにあった「古い御手洗い」
その一番端っこの個室に「便所ばばあ」が出る、
という…
「むらさきばばあ」と違って、尻を撫でるだけで消えてくれるんですが、
小学生には「古くてぽっとん」な御手洗いも、ばばあも怖くてですね、
徒党を組んで御手洗いに行っておりました。
児童が一人で御手洗いに行かないのは防犯上の観点からも良いことのような気がするので、日本各地に現れる「御手洗いの怪異」は児童の安全を守っている存在なのかもしれません。
ありがとう、ばばさまたち、
御手洗いで不埒なことを考えている変質者さんは、
ばばさまに内臓取られてしまえ。




