表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カチコミ・イレブン 〜北野高校女子サッカー部、全国制覇への盃〜  作者: やしゅまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/44

第39話「墓石崩し ― 1点の誇り」

後半が始まった。

 北野は序盤から総力を尽くして攻め立てる。


 「任侠なげ、いくぜ!」

 梨花が大きく振りかぶり、渾身のロングスローをゴール前へ投げ込む。舞が競り、紗希が飛び込み、心愛が足を伸ばす。だが――。


 「絶対に通させない!」

 梓と玲の声が重なり、黒曜館は体を投げ出し、次々に弾き返す。ボールはこぼれ、ピッチ上は乱戦状態。


 観客が立ち上がる。

 「押し込め!」「いや、黒曜館が止めた!」

 どちらの声も渦巻く中、ネットは揺れない。


 ◇


 ベンチの竜司が煙草をくわえたまま怒鳴った。

 「墓石崩しだァ! 一人が犠牲になってでも道を作れ! 全員で石を粉々に砕くんだよ!」


 その言葉に、紗希が吠えるように前に走った。

 「私が行く! 通すためなら何度でも!」

 彼女は中央へ突進。ディフェンス3人が一斉に寄せる。押し倒されそうになりながらも、身体を盾にしてボールをキープして舞へパス


 「紗希ナイス!」

 舞はすぐさま左サイドへ展開。


 「心愛、抜けろ!」

 舞のパスに反応し、心愛がスピードに乗って裏へ抜ける。


 「止めろ!」玲が叫ぶ。

 しかし心愛の加速は誰も追いつけない。ゴール前へ切り込み、クロスを放つ。


 「決めろ!」

 だが――黒曜館のディフェンスが最後の力でクリア!


 ◇


 その瞬間、ボールが宙に浮く。

 観客が息を飲む。


 そこへ――梨花が突っ込んだ。


 「一家の柱は……倒れねぇッ!」


 黒曜館の二人がユニフォームを掴み、必死に止めようとする。だが梨花は止まらない。

 血走った目でボールを見据え、頭から突っ込む。


 ――渾身のダイビングヘッド。


 ネットが、大きく揺れた。


 「ゴオオオオオール!!!」

 実況の絶叫と同時に、観客席が総立ちとなる。

 「鉄壁が破られた! 黒曜館の無失点神話が、いま崩れた!!」


 ◇


 梨花は芝に倒れ込み、肩で息をしていた。

 ユニフォームは泥まみれ、腕には相手に掴まれた痕が赤く残る。

 「……はぁ、はぁ……任侠は、ぶっ倒れても、筋を通すんだよ」

 彼女はかすれ声でそう呟き、拳を突き上げた。


 ◇


 残り時間、黒曜館は必死に攻めようとした。

 だが、彼女たちには「守る」以外の形はなかった。

 前へ出る度にボールを奪われ、逆に北野の時間稼ぎに呑まれていく。


 やがて――試合終了の笛が鳴った。


 スコアは1-0。

 北野高校、決勝進出。


 ◇


 ピッチを去る黒曜館の選手たち。その背中は泥にまみれ、誰もが立ち尽くしていた。

 キャプテン・不破梓が梨花に近づき、静かに言った。

 「鉄壁も……お前らの筋には敵わなかった。……あんたらの勝ちだ」


 梨花は荒い呼吸のまま笑って返す。

 「……柱は、ぶっ壊せるもんじゃねぇ。任侠は、揺るがねぇんだ」


 ◇


 竜司は腕を組み、選手たちを見渡した。

 「鉄壁だろうが墓石だろうが、任侠は押し通す。北野一家、決勝進出だ!」


 観客席から大歓声が巻き起こる。

 「北野高校、決勝進出!!」


 仲間たちは泥まみれのまま抱き合い、涙を流した。

 ――その姿は、まさに任侠。泥臭く、ひたむきで、そして誇り高い戦いだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ