第11話「裏切り防止の絆カバー」
県大会四回戦の舞台に立った北野高校女子サッカー部。相手は星南学院。派手なドリブルで観客を沸かせる、県内でも屈指の技巧派チームだ。特に10番のウイングは“マジシャン”と呼ばれ、1人で試合を変える力を持つと噂されていた。
試合前、控室で竜司が鋭い眼光を放つ。
「いいかテメェら。今日からは“裏切り防止”だ」
部員たちはきょとんとする。竜司はホワイトボードにマークを描き、拳で叩きながら続けた。
「仲間を売ったヤツは地獄行きだ。お前が抜かれたら、横のヤツが必ず潰せ。誰かが一人で沈むことは許さねぇ」
舞がすぐに補足する。「つまりカバーリングを徹底するの。連動して守る」
円陣で梨花が拳を握る。「上等だ。ウチら、裏切りなんて絶対しねぇ!」
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キックオフ直後、星南の10番がボールを持つ。細かいステップで心愛を翻弄し、あっさりと抜き去る。観客がどよめく。
しかし、すぐに舞が横からスライディングでカット。スタンドから拍手が起きた。
10番は顔をしかめ、「なんで次がすぐ来るんだよ」と苛立つ。
前半15分、再び梨花が抜かれる。だが今度はGKの美咲が前に飛び出してブロック。
「ナイスカバー!」と舞が叫ぶと、美咲は親指を立てた。
星南はドリブル突破を狙うが、そのたびに誰かが二重三重にカバーに入る。個人技が封じられ、焦りの色が濃くなっていった。
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後半、竜司はベンチから吠える。
「オイ! 仲間の背中は見捨てんな! 一人倒れたら、全員で守れ!」
その言葉が響いたのか、チームはますます一体となる。
後半25分、星南の10番がついに中央突破に成功。だが直後に舞と梨花が同時に寄せ、ボールを刈り取る。すかさず舞が前方へスルーパス。
梨花が縦へ抜け出し、ワンタッチで左へ展開。そこに紗季が走り込み、右足を振り抜く。
鋭いシュートがゴールネットを揺らす――1-0!
歓声が会場を揺らした。紗季は拳を突き上げ、梨花と抱き合う。
「裏切りなしのカウンター、最高だな!」
「当たり前だ、ウチらは一家だろ!」
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残り時間、星南は10番を中心に猛攻を仕掛ける。しかし北野は全員が声を掛け合い、互いの穴を埋め続けた。
「右、私が行く!」「カバー任せろ!」
そのたびに竜司はベンチで腕を組み、満足そうに頷く。
そして笛が鳴った。試合終了、1-0で北野の勝利。
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試合後、竜司のもとへ梨花と舞が駆け寄る。
「監督、やったな!」
「全員が連動して、相手を止めたわ」
竜司はタバコをくわえ、火をつけずに口の端を吊り上げた。
「一人が倒れても、シマは仲間で守る。それが任侠の筋よ」
部員たちは誇らしげに笑い、肩を叩き合う。
北野高校の“抗争”は、さらに絆を強めて続いていく――。




