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第8話:逃げた先にも、君がいた――悠翔、家出。そして七海の涙と、芸能界の闇



 


 ――俺は、限界だった。


 


 学校では「召使い」「奴隷」扱い。

 妹とライバルに取り囲まれ、クラスでは浮きまくり。

 バイト先にも七海が押しかけてきて、唯一の逃げ場がなくなった。


 


 家では、確かに甘やかされる。

 でも、それも七海の優しさに甘えてばかりで、

 本当にこれでいいのか、自分でもわからなくなっていた。


 


 だから――

 俺は、家を出た。


 


 



 


 夜の街。

 コンビニの駐車場で、一人カップラーメンを食べる。

 ――情けないな、自分。


 


 その時、スマホが震えた。

 七海からのLINEが、何十件も届いていた。


 


《どこ?》《何してるの?》《怒ってないよ、心配なだけ》《早く帰ってきて……》


 


 でも、俺は返信できなかった。

 今の俺は、七海の“旦那”なんか名乗れる器じゃない。

 ただ、守られてるだけの存在だ。


 


 



 


 一方その頃、七海は――

 自宅で、膝を抱えて泣いていた。


 


「……バカ。悠翔のバカ……」


 


 心の中は、不安でいっぱいだった。

 もし、このまま悠翔が帰ってこなかったら――


 そう考えただけで、胸が張り裂けそうになった。


 


 七海は決意した。

 「迎えに行こう」と。


 


 



 


 夜中の公園。


 俺がベンチでうずくまっていると、

 七海が、息を切らせて駆けてきた。


 


「――悠翔っ!」


 


 次の瞬間、俺は七海に抱きしめられていた。


 


「バカっ……! 心配させないで……!

 何でもっと、頼ってくれないの……!」


 


 その言葉に、涙が出そうになった。


 


「……ごめん、俺、七海に守られてばっかで……」


「当たり前じゃん。旦那なんだから、私が守るの。

 でもね――悠翔にしか守れない私も、いるんだよ?」


 


 七海の声は、震えていた。


 


「だから、お願い。

 一人で苦しまないで。

 私たちは、夫婦でしょ?」


 


 



 


 帰り道、俺たちは手をつないで歩いた。


 


 寒い夜風の中で、二人の手の温もりだけが確かなものだった。


 


「……ただいま、七海」


「おかえり、悠翔♡」


 


 やっと、心から言えた気がした。


 


 



 


 だが――

 平穏な時間は、長くは続かなかった。


 


 翌日、ステラプロに衝撃のニュースが飛び込む。


 


《Seven☆Days・橘美月に芸能界引退説浮上》

《如月凛花、ソロ復帰の噂》


 


 グループ内の不和、解散危機――

 七海を取り巻く世界は、再び動き始めた。


 


「悠翔……私、どうしたらいい?」


 


 七海は、強がって笑ったけど――

 本当は、不安でいっぱいだった。


 


 だから、俺は決めた。


 


「一緒に、乗り越えよう。

 お前の“召使い”でいいから――

 ずっと、お前の隣にいる」


 


 七海は、泣き笑いで俺に抱きついてきた。


 


「……ありがと、悠翔」


 


 




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