第8話:逃げた先にも、君がいた――悠翔、家出。そして七海の涙と、芸能界の闇
――俺は、限界だった。
学校では「召使い」「奴隷」扱い。
妹とライバルに取り囲まれ、クラスでは浮きまくり。
バイト先にも七海が押しかけてきて、唯一の逃げ場がなくなった。
家では、確かに甘やかされる。
でも、それも七海の優しさに甘えてばかりで、
本当にこれでいいのか、自分でもわからなくなっていた。
だから――
俺は、家を出た。
◆
夜の街。
コンビニの駐車場で、一人カップラーメンを食べる。
――情けないな、自分。
その時、スマホが震えた。
七海からのLINEが、何十件も届いていた。
《どこ?》《何してるの?》《怒ってないよ、心配なだけ》《早く帰ってきて……》
でも、俺は返信できなかった。
今の俺は、七海の“旦那”なんか名乗れる器じゃない。
ただ、守られてるだけの存在だ。
◆
一方その頃、七海は――
自宅で、膝を抱えて泣いていた。
「……バカ。悠翔のバカ……」
心の中は、不安でいっぱいだった。
もし、このまま悠翔が帰ってこなかったら――
そう考えただけで、胸が張り裂けそうになった。
七海は決意した。
「迎えに行こう」と。
◆
夜中の公園。
俺がベンチでうずくまっていると、
七海が、息を切らせて駆けてきた。
「――悠翔っ!」
次の瞬間、俺は七海に抱きしめられていた。
「バカっ……! 心配させないで……!
何でもっと、頼ってくれないの……!」
その言葉に、涙が出そうになった。
「……ごめん、俺、七海に守られてばっかで……」
「当たり前じゃん。旦那なんだから、私が守るの。
でもね――悠翔にしか守れない私も、いるんだよ?」
七海の声は、震えていた。
「だから、お願い。
一人で苦しまないで。
私たちは、夫婦でしょ?」
◆
帰り道、俺たちは手をつないで歩いた。
寒い夜風の中で、二人の手の温もりだけが確かなものだった。
「……ただいま、七海」
「おかえり、悠翔♡」
やっと、心から言えた気がした。
◆
だが――
平穏な時間は、長くは続かなかった。
翌日、ステラプロに衝撃のニュースが飛び込む。
《Seven☆Days・橘美月に芸能界引退説浮上》
《如月凛花、ソロ復帰の噂》
グループ内の不和、解散危機――
七海を取り巻く世界は、再び動き始めた。
「悠翔……私、どうしたらいい?」
七海は、強がって笑ったけど――
本当は、不安でいっぱいだった。
だから、俺は決めた。
「一緒に、乗り越えよう。
お前の“召使い”でいいから――
ずっと、お前の隣にいる」
七海は、泣き笑いで俺に抱きついてきた。
「……ありがと、悠翔」
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