表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/23

第21話:遠くなる距離、それでも繋がる日常


 


――春から半年。


 


 大学生活は完全に日常になっていた。


 


 講義、レポート、バイト、課題提出。


 


 気づけば一日が終わる。


 


 



 


「真中、今日飲み行く?」


 


 陸が気軽に声をかけてくる。


 


「悪い、今日は帰る」


 


 


「また“帰る”かよ」


 


 


 奏がニヤつく。


 


「彼女でもいんのか?」


 


 


「……まぁな」


 


 


 曖昧に笑って誤魔化す。


 


 



 


 本当は――“彼女”じゃない。


 


 


 妻だ。


 


 


 でも、それを言うことはできない。


 


 



 


 夜。


 


 マンション。


 


 


 電気のついていない部屋。


 


 


 静かすぎる。


 


 



 


《今日も遅くなる》


 


 


 七海からの短いメッセージ。


 


 


 それだけで状況は分かる。


 


 


 収録。リハーサル。撮影。


 


 



 


 俺はソファに座ってスマホを見つめる。


 


 


 既読はついている。


 


 でも返信はない。


 


 



 


(忙しいんだろうな)


 


 


 それが普通になっていく。


 


 



 


 深夜2時。


 


 


 玄関の鍵が回る音。


 


 


「ただいま……」


 


 


 疲れ切った声。


 


 



 


 七海が、スーツケースを引きずりながら入ってくる。


 


 


 メイクは薄く崩れている。


 


 


 それでも、どこか綺麗だった。


 


 



 


「おかえり」


 


 


「うん……」


 


 


 そのままソファに倒れ込む。


 


 



 


「今日さ、マジでヤバかった」


 


 


「何が?」


 


 


「朝から生放送3本」


 


 


「ブラック企業かよ」


 


 


「アイドルだからね」


 


 


 軽く笑う。


 


 



 


 でも、その笑いは少しだけ弱い。


 


 



 


 俺は毛布をかける。


 


 


「飯は?」


 


 


「いらない……」


 


 


 即答。


 


 



 


 しばらく沈黙。


 


 


 七海は目を閉じたまま言う。


 


 


「ねぇ、悠翔」


 


 


「ん?」


 


 


「ちゃんと大学行ってる?」


 


 


「行ってるって」


 


 


「ふーん」


 


 



 


 それだけで終わる会話。


 


 


 でも、それが“日常”だった。


 


 



 


 翌朝。


 


 


 七海はもういない。


 


 


 置き手紙。


 


 


《次は3日後に帰る》


 


 


 それだけ。


 


 



 


 大学。


 


 講義室。


 


 


 窓の外を見ながら思う。


 


 


(3日か……長いな)


 


 



 


 その夜。


 


 


 またメッセージが届く。


 


 


《今から移動。少しだけ話せる》


 


 


 通話ボタンを押す。


 


 


「もしもし」


 


 


『……悠翔』


 


 


 雑音混じりの声。


 


 


「生きてるか?」


 


 


『生きてる』


 


 


 即答。


 


 



 


 短い沈黙。


 


 


『ねぇ』


 


 


「ん?」


 


 


『帰ったらさ』


 


 


『パフェ食べたい』


 


 


「急に?」


 


 


『うん』


 


 


『甘いやつ』


 


 



 


 それだけで分かる。


 


 


 疲れてる。


 


 



 


「了解」


 


 


『……あと』


 


 


「ん?」


 


 


『ぎゅーも』


 


 


 声が小さい。


 


 



 


「わかった」


 


 


『じゃあね』


 


 


「おう」


 


 


 通話終了。


 


 



 


 画面が暗くなる。


 


 


 でも、心は少しだけ温かい。


 


 



 


 会えない時間は増えた。


 


 話す時間は減った。


 


 


 それでも――


 


 


 繋がっている感覚だけは、消えなかった。


 


 


――つづく



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ