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第20話:秘密のまま、それでも――二人だけの未来


少しずつ… 文が少なくなってきます。



 


――春から数ヶ月。


 


 大学生活は想像以上に忙しかった。


 


 講義、課題、サークル勧誘。

 気づけば一日が終わる。


 


 



 


 そして七海は――


 


 Seven☆Daysとして、さらに遠い存在になっていった。


 


 テレビ、海外撮影、ライブツアー。


 


 



 


 会える時間は、ほとんどない。


 


 それでも。


 


 



 


《今夜、帰れる》


 


 


 そんな短いメッセージが届くだけで、十分だった。


 


 



 


 夜。


 


 静かなマンションの玄関。


 


 


「ただいま」


 


 


 その声だけでわかる。


 


 


「おかえり」


 


 


 七海は、少し疲れた顔で立っていた。


 


 



 


「今日さ、海外の収録だったんだけど」


 


 


「うん」


 


 


「マジで眠かった」


 


 


 いつものように塩対応。


 


 でも、ソファに座った瞬間――


 


 


 ぽすっ、と俺の肩にもたれた。


 


 



 


「……ちょっとだけ」


 


 


 それだけ。


 


 


 それが全部だった。


 


 



 


 テレビでは、七海が映っている。


 


 ステージの上の“アイドル・NANA”。


 


 


 でも今ここにいるのは――


 


 ただの、眠そうな妻だった。


 


 



 


「なぁ、悠翔」


 


 


「ん?」


 


 


「ちゃんと大学行ってる?」


 


 


「行ってるわ」


 


 


「ふーん」


 


 


 それだけ言って、目を閉じる。


 


 



 


 静かすぎる夜。


 


 


 でも、不思議と満たされていた。


 


 



 


 翌朝。


 


 


「じゃ、行ってくる」


 


 


「ん」


 


 


 それだけ。


 


 


 キスもない。

 見送りもない。


 


 


 学校では“他人”。

 世界には“秘密”。


 


 



 


 でも――


 


 


 玄関のドアが閉まる瞬間。


 


 


「……いってらっしゃい」


 


 


 小さく、確かに聞こえた。


 


 



 


 それだけで十分だった。


 


 



 


 それから、数年。


 


 


 世間では、七海の名前はさらに大きくなっていった。


 


 伝説のアイドル。


 


 国民的存在。


 


 


 でも、誰も知らない。


 


 


 彼女が夜に帰る場所を。


 


 



 


 そして俺も――


 


 普通の大学生から、少しずつ変わっていった。


 


 


 それでも。


 


 



 


 変わらないものが一つだけあった。


 


 



 


 深夜。


 


 静かな部屋。


 


 


 扉が開く。


 


 


「ただいま」


 


 


「おかえり」


 


 


 それだけの関係。


 


 


 でも、それ以上だった。


 


 



 


 誰にも言えない。


 


 誰にも見えない。


 


 


 それでも確かに――


 


 


 そこには“夫婦”がいた。


 


 



 


 七海は、俺の隣に座りながら言う。


 


 


「ねぇ、悠翔」


 


 


「ん?」


 


 


「もしさ」


 


 


「うん」


 


 


「いつかバレたら、どうする?」


 


 



 


 俺は少しだけ笑って――


 


 


「その時考える」


 


 



 


 七海も笑った。


 


 


「適当」


 


 



 


 でも、その笑顔は安心していた。


 


 



 


 世界は知らない。


 


 誰も知らない。


 


 


 でも――


 


 


 この関係だけは、確かに続いている。


 


 



 


 秘密のまま。


 


 それでも、幸せなまま。


 


 


――完――



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


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読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


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