第18話:誰にも言えないまま、それでも――二人だけの結婚
――運動会、終了後。
「ふぅ……疲れた」
俺がそう言うと、隣で七海が水を飲みながら言った。
「うるさ。運動会くらいで疲れんなよ」
いつも通りの塩対応。
学校では“氷の女王”。
クラスの前では、相変わらず距離のある態度。
でも――
俺だけは知っている。
昨夜、同じベッドで「明日絶対勝てよ」って笑ってたことも。
負けたら拗ねるって言ってたことも。
◆
放課後。
家のリビング。
「ねぇ、悠翔」
七海がソファに座りながら言う。
「私、これからもっと忙しくなる」
◆
それはわかっていた。
Seven☆Daysとしての活動は、さらに加速する。
テレビ、ライブ、海外展開。
◆
「お前は?」
「大学行く」
即答だった。
◆
「普通に勉強して、普通に生きる」
◆
七海は少しだけ黙って――
「……そっか」
◆
そして、ぽつりと。
「じゃあ、もっと会えなくなるね」
◆
その声は、ほんの少しだけ弱かった。
◆
俺は笑う。
「会えないわけじゃないだろ」
◆
「家帰ればいるし」
◆
「……そういう問題じゃない」
◆
七海は、少しだけ視線を逸らして――
「ねぇ」
◆
「子供、欲しい」
◆
……はい?
◆
一瞬、時間が止まった。
◆
「お前、今なんて?」
◆
「だから、子供」
◆
普通の顔で言うな。
◆
「未来の話」
◆
「お前との」
◆
その言葉は、冗談じゃなかった。
◆
俺は少しだけ笑って――
「……気が早すぎるだろ」
◆
「うるさい」
◆
でも、その頬は少しだけ赤かった。
◆
◆
卒業式の日。
体育館には、両親の姿があった。
◆
俺の両親と――七海の両親。
◆
初めての、正式な顔合わせ。
◆
「この度は、うちの娘が……」
「いえ、こちらこそ……」
ぎこちない大人の会話。
◆
でも、不思議と空気は悪くなかった。
◆
俺は、卒業式の前に全てを話していた。
◆
七海と結婚していること。
でも、芸能活動を壊さないために公表しないこと。
結婚式も挙げないこと。
◆
それを聞いた両親は――
「お前が選んだなら、それでいい」
◆
そう言ってくれた。
◆
七海の両親も同じだった。
「この子が選んだ道なら」
◆
ただ、それだけ。
◆
卒業式が終わる。
校庭。
桜が舞う。
◆
七海が隣に立つ。
「ねぇ、悠翔」
◆
「ん?」
◆
「私たちさ」
◆
「ずっと、こうなんだろうね」
◆
秘密のまま。
誰にも知られず。
◆
でも、確かに一緒にいる。
◆
俺は、少しだけ笑って――
「それでいいよ」
◆
七海が、ふっと笑う。
「……バカ」
◆
そして、誰にも見えない角度で――
手を握ってきた。
◆
学校では“他人”。
世界には“秘密”。
◆
でも――
◆
俺たちは、最初から最後まで。
◆
確かに“夫婦”だった。
一旦一通り完結。
次回からは悠翔は大学へ進学し、七海はアイドルの道へ
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