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第18話:誰にも言えないまま、それでも――二人だけの結婚


 


――運動会、終了後。


 


「ふぅ……疲れた」


 


 俺がそう言うと、隣で七海が水を飲みながら言った。


 


「うるさ。運動会くらいで疲れんなよ」


 


 いつも通りの塩対応。


 


 学校では“氷の女王”。

 クラスの前では、相変わらず距離のある態度。


 


 でも――


 


 俺だけは知っている。


 


 昨夜、同じベッドで「明日絶対勝てよ」って笑ってたことも。

 負けたら拗ねるって言ってたことも。


 


 



 


 放課後。


 


 家のリビング。


 


「ねぇ、悠翔」


 


 七海がソファに座りながら言う。


 


「私、これからもっと忙しくなる」


 


 



 


 それはわかっていた。


 


 Seven☆Daysとしての活動は、さらに加速する。


 


 テレビ、ライブ、海外展開。


 


 



 


「お前は?」


 


 


「大学行く」


 


 


 即答だった。


 


 



 


「普通に勉強して、普通に生きる」


 


 



 


 七海は少しだけ黙って――


 


 


「……そっか」


 


 



 


 そして、ぽつりと。


 


 


「じゃあ、もっと会えなくなるね」


 


 



 


 その声は、ほんの少しだけ弱かった。


 


 



 


 俺は笑う。


 


 


「会えないわけじゃないだろ」


 


 



 


「家帰ればいるし」


 


 



 


「……そういう問題じゃない」


 


 



 


 七海は、少しだけ視線を逸らして――


 


 


「ねぇ」


 


 



 


「子供、欲しい」


 


 



 


 ……はい?


 


 



 


 一瞬、時間が止まった。


 


 



 


「お前、今なんて?」


 


 



 


「だから、子供」


 


 



 


 普通の顔で言うな。


 


 



 


「未来の話」


 


 



 


「お前との」


 


 



 


 その言葉は、冗談じゃなかった。


 


 



 


 俺は少しだけ笑って――


 


 


「……気が早すぎるだろ」


 


 



 


「うるさい」


 


 



 


 でも、その頬は少しだけ赤かった。


 


 



 


 



 


 卒業式の日。


 


 


 体育館には、両親の姿があった。


 


 



 


 俺の両親と――七海の両親。


 


 



 


 初めての、正式な顔合わせ。


 


 



 


「この度は、うちの娘が……」


 


 


「いえ、こちらこそ……」


 


 


 ぎこちない大人の会話。


 


 



 


 でも、不思議と空気は悪くなかった。


 


 



 


 俺は、卒業式の前に全てを話していた。


 


 



 


 七海と結婚していること。


 


 でも、芸能活動を壊さないために公表しないこと。


 


 結婚式も挙げないこと。


 


 



 


 それを聞いた両親は――


 


 


「お前が選んだなら、それでいい」


 


 



 


 そう言ってくれた。


 


 



 


 七海の両親も同じだった。


 


 


「この子が選んだ道なら」


 


 


 



 


 ただ、それだけ。


 


 



 


 卒業式が終わる。


 


 


 校庭。


 


 桜が舞う。


 


 



 


 七海が隣に立つ。


 


 


「ねぇ、悠翔」


 


 



 


「ん?」


 


 



 


「私たちさ」


 


 



 


「ずっと、こうなんだろうね」


 


 



 


 秘密のまま。


 


 誰にも知られず。


 


 



 


 でも、確かに一緒にいる。


 


 



 


 俺は、少しだけ笑って――


 


 


「それでいいよ」


 


 



 


 七海が、ふっと笑う。


 


 


「……バカ」


 


 



 


 そして、誰にも見えない角度で――


 


 


 手を握ってきた。


 


 



 


 学校では“他人”。


 


 世界には“秘密”。


 


 



 


 でも――


 


 



 


 俺たちは、最初から最後まで。


 


 



 


 確かに“夫婦”だった。


 


 



一旦一通り完結。

次回からは悠翔は大学へ進学し、七海はアイドルの道へ


最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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