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第17話:文化祭のキス処刑――氷の女王と平凡男子、最後まで秘密のまま


 


――文化祭当日。


 


「次の組、ステージに上がってください!」


 


 体育館に響く司会の声。


 


 そこには異様な空気があった。


 


 壇上には、ライト。

 カメラ。

 そして――“ペア発表システム”。


 


 



 


「これ、何の企画だよ……」


 


 俺は思わず呟いた。


 


 



 


 陸が苦笑する。


 


「カップル当てゲームらしいぞ。

 当たったペアは公開キスっていう地獄仕様」


 


 



 


「誰が得するんだそれ……」


 


 



 


 壇上では、次々とペアが呼ばれていた。


 


「3組目! 佐伯陸&女子生徒!」


 


「きゃー!」


 


 軽いキス。

 会場が盛り上がる。


 


 



 


「5組目! 橘美月&男子生徒!」


 


「……やらない」


 


「えー!?」


 


 美月は冷たくスルー。


 


 



 


 そして――


 


 



 


「最終組! 如月七海&真中悠翔!」


 


 



 


 ――体育館が一瞬で静まった。


 


 



 


「え……?」


 


「今、如月って言った?」


 


「氷の女王と……あいつ?」


 


 



 


 視線が一斉に俺に突き刺さる。


 


 



 


 終わった。


 


 



 


 完全に終わった。


 


 



 


 七海は、隣で小さく息を吐いた。


 


 


「……行くよ」


 


 



 


 その声は、いつもの“学校モード”。


 


 



 


 氷の女王。


 


 完璧な仮面。


 


 



 


 でも――


 


 



 


 俺だけは知っている。


 


 



 


(こいつ、家では甘々なんだよな……)


 


 



 


 ステージに上がる。


 


 照明が眩しい。


 


 



 


「では……キス、お願いします!」


 


 



 


 司会の声。


 


 



 


 体育館がざわつく。


 


 



 


「マジでやるのかよ……」


 


「氷の女王とキスとか伝説だろ」


 


「羨ましすぎる死ぬ」


 


 



 


 七海は、俺の方を見た。


 


 



 


 一瞬だけ、氷が溶ける。


 


 



 


 小さく、口を動かした。


 


 



 


「……これで、いいでしょ」


 


 



 


 でも、その顔は――


 


 



 


 隠しきれないほど、嬉しそうだった。


 


 



 


(おい、それズルいだろ)


 


 



 


 次の瞬間。


 


 



 


 七海が、一歩近づく。


 


 



 


 そして――


 


 



 


 軽く、俺の唇に触れた。


 


 



 


 一瞬。


 


 ほんの一瞬。


 


 



 


 でも、確かに。


 


 



 


 体育館が爆発した。


 


 



 


「うわああああああ!!」


 


「マジかよ!!」


 


「氷の女王がキスした!!」


 


「死んだ!!俺の青春終わった!!」


 


 



 


 男子、崩れ落ちる。


 


 膝から崩壊。


 


 地面に手をつく者続出。


 


 



 


 だが――


 


 



 


 誰も気づいていない。


 


 



 


 そのキスが“演技”でも“恋愛”でもなく――


 


 



 


 “夫婦のもの”だということに。


 


 



 


 



 


「はい、写真撮影いきまーす!」


 


 



 


 地獄は続く。


 


 



 


 俺と七海は、並ばされた。


 


 



 


 距離が近い。


 


 近すぎる。


 


 



 


(やばい、肩触れそう)


 


 



 


 でも触れたらバレる。


 


 



 


 その時――


 


 



 


 七海が、小声で言った。


 


 



 


「さっさと握って」


 


 



 


 ……命令口調。


 


 でも、めちゃくちゃ小さい声。


 


 



 


 俺は一瞬戸惑って――


 


 



 


 手を握った。


 


 



 


 恋人繋ぎ。


 


 



 


 体育館の誰にも気づかれないように。


 


 



 


 七海は、少しだけ口元を緩めた。


 


 



 


(バレるなよ)


 


 



 


(でも、離すな)


 


 



 


 そんな矛盾した感情が、指先から伝わる。


 


 



 


 カシャ。


 


 



 


 写真が撮られた。


 


 



 


 その瞬間――


 


 



 


 世界は、何も知らないまま。


 


 



 


 俺たちの“秘密”は守られた。


 


 



 


 でも――


 


 



 


 確かに、距離はゼロになっていた。


 


 


――つづく



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