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第14話:修学旅行で大ピンチ!? 同じ空気、触れられない距離


 


――修学旅行当日。


 


「よし、全員いるなー。バス乗れー」


 


 担任の声とともに、クラス全員が浮かれた空気に包まれる。


 


「やべぇ、テンション上がる!」

「夜絶対騒ぐやつじゃんこれ!」

「女子部屋覗きに行こうぜ!」


 


 ……平和だな、お前ら。


 


 



 


 でも、俺にとっては――


 


 “戦場”だった。


 


 



 


 視線の先には、如月七海。


 


 いつも通りのギャル、いつも通りの氷の女王。

 俺のことなんて、視界にも入れていない。


 


 



 


 ――でも、昨日の夜は。


 


「悠翔、ぎゅーして……」


 


 なんて言いながら、俺の腕の中で寝てた人と同一人物。


 


 



 


(距離感バグるって、マジで……)


 


 



 


 バスの席。


 


 俺は陸たちと座ることになった。


 


「なぁ悠翔、修学旅行で一番楽しみなこと何?」

 → 陸


「温泉」

 → 奏


「女子」

 → 青山


 


 お前はブレねぇな。


 


 



 


 ふと前を見ると――


 


 七海が、女子グループの中心で笑っていた。


 


 完璧な笑顔。

 誰にも隙を見せない、トップの存在。


 


 



 


(あれが“外の七海”)


 


 



 


(で、俺だけが知ってる“本当の七海”が――)


 


 



 


 夜になると、ああなる。


 


 



 


 ギャップがえぐい。


 


 



 


 旅館に到着。


 


 和風の大きな建物、畳の香り。

 完全に“非日常”。


 


 



 


「部屋割り発表するぞー」


 


 来た。運命の瞬間。


 


 



 


 もちろん――


 


 七海と同じ部屋なわけがない。


 


 



 


 俺は男子部屋。


 


 七海は女子部屋。


 


 



 


 当たり前。でも――


 


 



 


(家なら、同じベッドなのに)


 


 



 


 その事実が、妙に寂しかった。


 


 



 


 夕食後。


 


 自由時間。


 


 



 


「悠翔、風呂行こうぜ」

 陸に誘われる。


 


「おう」


 


 



 


 大浴場。


 


 湯気の中、男子たちのバカ騒ぎ。


 


「なぁ、女子も同じ時間帯らしいぞ!」

「壁越しに声聞こえるんじゃね!?」


 


 やめろ。


 その向こうに、俺の嫁がいる。


 


 



 


 その頃、女子風呂。


 


 


「ねぇ七海、あんたさー」


 


 凛花が、ニヤニヤしながら言う。


 


 


「ほんとは悠翔先輩と一緒に入りたいんでしょ?」


 


 



 


「は?」


 


 七海、即否定。


 


 


「キモ。あり得ないんだけど」


 


 



 


 ――完全に演技。


 


 



 


 でも、湯船の中で。


 


 


(……会いたい)


 


 



 


 誰にも見えないところで、

 ほんの少しだけ、表情が緩んだ。


 


 



 


 夜。


 


 消灯時間。


 


 



 


「なぁ悠翔、寝た?」

「まだ起きてる?」

「トランプやろうぜ」


 


 男子部屋、うるさい。


 


 



 


 でも――


 


 俺のスマホが、震えた。


 


 


《今、外来れる?》


 


 七海からだった。


 


 



 


 心臓が、一気に跳ね上がる。


 


 



 


 俺は、こっそり部屋を抜け出した。


 


 



 


 旅館の裏庭。


 


 静かな夜。


 


 



 


「……悠翔」


 


 


 そこにいたのは、

 パーカー姿の七海。


 


 



 


「なんで来たの」


 


 



 


「……会いたかったから」


 


 



 


 それだけだった。


 


 



 


 学校では絶対に言えない言葉。


 


 



 


 でも今は――


 


 



 


 誰もいない。


 


 



 


 七海は、ゆっくり近づいてきて――


 


 



 


「ちょっとだけ、いい?」


 


 



 


 俺に、ぎゅっと抱きついた。


 


 



 


 温もり。


 


 



 


 たったそれだけなのに――


 


 



 


 涙が出そうになるくらい、安心した。


 


 



 


「……やっぱ無理」


 


 



 


「何が?」


 


 



 


「悠翔と同じ空間にいて、他人のふりするの」


 


 



 


 七海の声は、小さく震えていた。


 


 



 


「学校だけでもキツいのに、修学旅行とか……」


 


 



 


 俺は、そっと彼女の背中を撫でた。


 


 



 


「でもさ」


 


 



 


「それでも隠すって決めたんだろ?」


 


 



 


「……うん」


 


 



 


「じゃあ、あと少しだけ頑張ろう」


 


 



 


 七海は、少しだけ顔を上げた。


 


 



 


「その代わり――」


 


 



 


「ここでは、甘えていい?」


 


 



 


 反則。


 


 



 


「いくらでも」


 


 



 


 その夜。


 


 



 


 ほんの少しだけ、

 “夫婦”に戻った。


 


 



 


 でも――


 


 



 


 その様子を、遠くから見ていた影があったことに、

 俺たちはまだ気づいていなかった。


 


 


――つづく




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