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第12話:最後の選択――「アイドル」か「愛」か、それでも隠し続ける理由


 


――ステラプロ本社、会議室。


 


 重苦しい空気の中、全員が席についていた。


 社長・城之内玲司。

 マネージャー・風間真理子。

 Seven☆Daysのメンバーたち。


 そして――七海。


 


「結論から言う」


 


 社長の低い声が、静かに響く。


 


「如月七海。お前には二つの選択肢がある」


 


 



 


「一つ。

 “恋愛の完全否定”を貫き、今後一切のスキャンダルを封じること。

 つまり、恋愛禁止契約の再締結だ」


 


 空気が張り詰める。


 


「もう一つは――」


 


 



 


「Seven☆Daysからの脱退。

 そして、個人としての活動、もしくは引退だ」


 


 



 


 沈黙。


 


 誰も、簡単には言葉を出せない。


 


 



 


 凛花が、ぎゅっと拳を握る。


 


「……お姉ちゃん」


 


 美月も、目を逸らさずに七海を見ていた。


 


 



 


 その時、風間真理子が口を開いた。


 


「七海。これは“選択”じゃない。

 芸能界に残るなら、答えは一つよ」


 


 



 


 七海は、ゆっくりと立ち上がった。


 


 


「……私、否定する」


 


 



 


 その声は、はっきりしていた。


 


 


「最初から最後まで、全部」


 


 



 


「結婚? 同棲? 恋愛?

 ――あり得ない」


 


 



 


 それは、完全な“演技”だった。


 でも同時に、彼女の“覚悟”でもあった。


 


 



 


「私は、アイドルだから」


 


 



 


 その一言で、すべてが決まった。


 


 



 


 会議は、それで終わった。


 


 七海は、何もなかったかのように歩き出す。

 誰にも弱さを見せずに。


 


 



 


 その夜。


 


 家のドアが、静かに開く。


 


 


「……ただいま」


 


 


 力の抜けた声だった。


 


 



 


「おかえり、七海」


 


 


 俺は、すぐに彼女を抱きしめた。


 


 



 


 七海は、何も言わなかった。


 ただ、ぎゅっと俺にしがみつく。


 


 



 


「……ねぇ、悠翔」


 


 


「ん?」


 


 


「私さ、今日……全部、否定した」


 


 



 


「知ってる」


 


 



 


「“あり得ない”って言った」


 


 



 


 少しだけ、間が空く。


 


 


「……傷ついた?」


 


 



 


 俺は、少しだけ笑った。


 


 


「いや」


 


 



 


「むしろ、かっこよかった」


 


 



 


 七海が、驚いた顔をする。


 


 


「だってさ」


 


 



 


「お前、全部守ったじゃん」


 


 



 


「アイドルも、夢も……俺との関係も」


 


 



 


 七海の目に、涙が浮かぶ。


 


 


「……バカ」


 


 



 


「普通、怒るとこでしょ」


 


 



 


「普通じゃないんで」


 


 



 


 そう言って、俺は彼女の頭を撫でた。


 


 



 


「俺も決めた」


 


 



 


「俺は、表に出ない」


 


 



 


 七海の体が、びくっと震える。


 


 


「悠翔……それ、本気で言ってるの?」


 


 



 


「うん」


 


 



 


「お前の夢、壊したくないから」


 


 



 


 その言葉に、七海は強く抱きついてきた。


 


 


「……ありがと」


 


 



 


「じゃあさ、その代わり――」


 


 



 


 七海は、少しだけいたずらっぽく笑う。


 


 


「家では、もっと甘やかして?」


 


 



 


「むしろ足りないくらいなんだけど♡」


 


 



 


 ……はい、いつもの七海に戻りました。


 


 



 


 でも、その笑顔の奥には――

 誰にも見せない、強さと覚悟があった。


 


 



 


 翌日。


 


 SNSには、七海の追加コメントが投稿された。


 

『 何度も言うけど、


私は誰とも付き合ってないし、

結婚なんてしてない。


変な噂、全部否定する。


アイドルとして、これからもやっていくから。』




 


 世界は、少しずつ沈静化していった。


 


 疑う声もある。

 信じる声もある。


 


 でも――


 


 



 


 “真実”を知っているのは、俺たちだけ。


 


 



 


 学校では――


 


「は? 何見てんの、邪魔っすわ」


 


 今日も“氷の女王”。


 


 



 


 家では――


 


「悠翔~♡ ぎゅーして?」


 


 今日も“甘々な妻”。


 


 



 


 どっちも、本当の七海。


 


 



 


 そして俺は――


 


 その両方を知る、たった一人の存在。


 


 


――つづく





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