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第10話:極秘結婚、ついにバレる!? 週刊誌の罠と、崩れかける日常


 


――その朝は、いつもより静かだった。


 


「……なんか、嫌な予感しかしないんだけど」


 


 登校しながら、俺は無意識にそう呟いていた。

 理由はわからない。でも、こういう時ってだいたい当たる。


 


 校門をくぐった瞬間――


 


「いたぞ! あの男子だ!」


 


 フラッシュ。


 


「真中悠翔くんですよね!? NANAさんとの関係について――!」


 


 ――終わった。


 


 



 


 突然、目の前に現れたのは、

 明らかに一般人じゃない雰囲気の男たち。


 スーツ、カメラ、マイク。


 ――週刊誌の記者。


 


「ちょ、待ってください、俺は――」


 


 言い訳なんて、通じるわけがない。

 すでにシャッターは切られている。


 


「同居してるって本当ですか!?」

「昨日も一緒にいたんですよね!?」

「あなたが“例の男”ですか!?」


 


 やばい、完全に特定されてる。


 


 



 


「どけよ!!」


 


 その時、陸が記者の間に割って入った。


 


「一般生徒に迷惑かけんなって言ってんだろ!!」


 


「学校に無断で入るとかアウトですよ」

 奏も冷静に言い放つ。


 


 さらに――


 


「生徒会として通報します」

 → 川口


「SNSで拡散してやるからな?」

 → 青山


「や、やめてくださいほんとに……!」

 → 三好(震えながらも前に出る)


 


 みんなが、俺を守ってくれていた。


 


 でも――


 


「……真中くん、答えてください」


 


 一人の記者が、低い声で言った。


 


「あなた、如月七海さんの“特別な存在”ですよね?」


 


 



 


 その瞬間、時間が止まった。


 


 言えば、全部終わる。

 言わなくても、疑いは深まる。


 


 どうする――


 


 


「……知らねーよ」


 


 その声は、俺じゃなかった。


 


 



 


「こいつ、ただの雑用係だから。

 勝手に妄想してんじゃねーよ、うっざー」


 


 七海だった。


 


 完璧なギャルの顔。

 冷たい視線。

 いつもの“氷の女王”。


 


「てか、邪魔っすわ。

 撮るなら私だけ撮れよ、価値あんのはそっちでしょ?」


 


 強い。

 かっこいい。

 でも――


 


 その言葉、ちょっと刺さるんですけど!?


 


 



 


 記者たちは、七海に集中した。

 俺への追及は、一旦止まる。


 


「NANAさん、否定されるんですね?」

「この男性とは関係ないと?」


 


 七海は一瞬だけ――

 ほんの一瞬だけ、俺を見た。


 


 そして、笑った。


 


「ただの他人。

 それ以上でも、それ以下でもない」


 


 



 


 ……胸が、痛かった。


 


 わかってる。

 これが正解だって。


 でも――


 


(俺たち、夫婦なのに)


 


 



 


 その日の放課後。

 俺は、バイトにも行けず、屋上にいた。


 


「……きついな」


 


 全部、きつい。


 秘密を守るために、嘘をつく。

 守るために、距離を取る。


 


 それが正しいってわかってても――

 やっぱり、つらい。


 


 



 


「悠翔」


 


 振り向くと、七海がいた。


 


 学校モードのまま、でも少しだけ表情が柔らかい。


 


「……さっきは、ごめん」


 


 小さな声だった。


 


「別に……わかってるし」


 


「でも、傷ついたでしょ」


 


 図星だった。


 


 



 


「……なあ七海」


 


 俺は、ゆっくり言った。


 


「このままさ、ずっと隠し続けるのって……正しいのかな」


 


 



 


 七海は、少し黙ってから言った。


 


「……正しくなくても、必要なの」


 


 その目は、真っ直ぐだった。


 


「だって、私がアイドルでいる限り、

 “恋愛”は許されないから」


 


 



 


 俺は、拳を握った。


 


 好きなのに。

 結婚してるのに。

 一緒にいるのに。


 


 全部、隠さなきゃいけない。


 


 



 


 でも――


 


「それでもいいよ」


 


 俺は言った。


 


「隠してでも、一緒にいられるなら」


 


 



 


 七海は、少しだけ驚いた顔をして――

 すぐに、ふっと笑った。


 


「……バカ」


 


 そして、誰もいないのを確認してから――

 小さく、俺に抱きついた。


 


 


「大好き、悠翔」


 


 


 その一言で、全部報われた気がした。


 


 



 


 だが――


 


 その様子を、遠くからカメラが捉えていたことに、

 俺たちはまだ気づいていなかった。


 


 


――つづく



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