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私の両親にも挨拶してくれますか?

「どうだ、ルシア」


「少し遠いですけど、位置は掴めました。 いけます!」


「ならば我々の勝利は確定だ、やれ!」


「はい!」




 ルシアの両手から放たれた光の玉が、城内へ向かって飛んでいく。


 そして壁をすり抜け、完全に見えなくなった。




「手ごたえありました、魔王の『闇の結界』消滅です」


「『ネーディスクリミネシオ』!」




 再び最大出力で発動させ、魔王城全体を覆う。




「確かに何者かからの生命力を奪えているな、こやつが魔王か」


「ラピア様、あれ!」


「これは、魔王城が震えている?」




 封印に対して抵抗しているのか。


 『ネーディスクリミネシオ』が効いている証だな。




「外に出て我々をどうにかしたいのだろう、封印を破ろうとしている」


「だだだ大丈夫なんですか!?」


「今封印を破れるくらいならもっと前に破っているであろう、所詮悪あがきだ」




 無駄な抵抗をしてくれる。


 


「魔王ともなれば力尽きるまで四天王以上に時間がかかる、何か話があるのなら今の内に聞くぞ」


「じゃあ、人間界に帰ってからなんですけど」


「ルシアは故郷に帰るのだったな、当然ついて行くとも」


「私の両親にも挨拶してくれますか?」


「う、うむ?」




 いや、考えてみればそういうことになるのか。


 ルシアの両親が生きているのであれば、対面は避けられまい。




「悪魔であることは隠さねばならないな」


「そうですね、悪魔と恋をしたなんて知られたらどんな目に会うか……」


「今でも人間はそういった者を火炙りにしたりするのか?」


「故郷の村はともかく聖教会に知られたら私だけでなく、村全体が焼かれてしまうかもしれません……」


「流石に人間共の一大勢力と戦争をするわけにはいかんな、最悪人間全てを敵に回してしまうことになる」




 それに、ルシアを泣かせるようなことはしたくない。




「人間のフリ、か……」


「自信がありませんか?」


「今までは殺し合うか陥れる相手だったからな、人間として生きるなど検討もつかん」


「じゃあ私が手取り足取り教えてあげますね!」


「頼む、少々別のニュアンスが混ざっていたような気もするが」




 既にカラダの関係も持ってしまったのだから、そこまで気にすることでもないが。




「そういえば、食事ってできるんですか?」


「人間のフリをするならば確かに食事もしなければ不自然だな」




 食事か、昔を思い出す。


 屋敷の者が去っていくまでは、食事もしていたのだったな。


 などと、余計なことを思い出してしまった。




「遠い昔にはできていたのだ、問題ない」


「食器の使い方とかはどうなんですか?」


「む……」




 そんなものとうに忘れているし、人間式ならそもそも知らぬぞ。




「そういった部分は教えてくれ、作法なぞわからぬ」


「私の故郷みたいな田舎だったら作法なんてどうでもいいんですけどね」


「……なら必要ないのか?」


「でも私は聖女として色々と仕込まれましたから、教えることはできますよ」


「頼む」




 新しい生き方は、まだまだ学ぶことが多そうだ。




「ひとつ言っておくが、ルシアの故郷にはそう長居せぬぞ」


「ええっ、そうなんですか!?」


「本来の目的があるであろう、魔王討伐もその過程に過ぎぬだからな」


「そうでした、ラピア様といつまでも一緒にいるために人間のまま不老不死になる方法を探さないと!」




 不老不死など人外に成った方が圧倒的に早い。


 だとすれば、簡単にはいかぬハズだ。


 どれだけ時間がかかるかもわからぬ。




「ルシアの寿命という明確なタイムリミットがあるからな、時間に余裕があるかは怪しいものだ」


「そんなにかかるんですか!?」


「不明だ、何もかもわからぬのだから手遅れになる可能性を考えれば急いだ方がよい」


「じゃあ、最悪間に合わないかもしれないってことですか?」


「そうはさせんよ、妾もルシアを失いたくはない」




 何の根拠もない言葉ではあるが、共に生きるためにはやり遂げるしかない。


 例えそれが前例の無いことであったとしても。




「そういえばラピア様の手で不老不死にしてもらうっていう話もありましたけど、アレはどうなんですか?」


「やめておけ、確かに妾にも不老不死化はできるが醜悪なゲル状の生命体になり自分で考えることができなくなる程知能が低下するぞ」


「ひぃっ!?」


「嘘はついておらぬからな、悪魔と契約するとはそういうモノだ」




 しかしルシアの美しさを損なうなど論外、今ほど自分がそんなことしかできない悪魔であることを悔いたことはない。




「と、収奪が終わったか」




 『ネーディスクリミネシオ』の範囲内にいる全ての生命反応が消えた。


 無事なのは効かないルシアのみ。




「じゃあ、魔王は……」


「ああ、これでルシアの『聖なる加護』は今後も維持される」


「やったぁ!」




 これで第一段階クリアか。


 次が難題だが……。




「では屋敷に戻るぞ、人間界に向かう準備をせねばな」


「待ってください、その前にまだやることが……」


「なんだ、魔王がちゃんと息絶えたかの確認か?」


「いえ、違います」




 やり残したことが何かあったであろうか?




「ラピア様、お願いがあります」

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