じゃあ、今の内にお昼食べちゃいますね
「着いたぞ、魔王城城門前だ」
「本当に結構距離ありましたね……」
「飛んで来れたのだから徒歩よりはマシであろう」
「その翼は飾りじゃなかったんですね」
「この翼で人間1人を抱えて飛べるわけがなかろう、魔法だぞ」
ルシアを抱えて飛ぶのは少々疲れたが。
徒歩での移動で消耗するよりは遥かにマシではある。
「ここから『闇の結界』の解除を試せばいいんですね」
「待て、その前に雑魚を掃除してからだ」
『ネーディスクリミネシオ』を最大出力で発動させる。
「きゃっ!?」
ルシアの周囲が光に包まれ、自動的に身を守る。
いきなりで驚かせてしまったか。
「ここからなら魔王城全体を範囲に収められる、これで中の連中は一掃可能というわけだ」
「魔王と四天王以外は、ですよね」
「そうだ、そろそろ来るだろうから隠れていろ」
「わかりました!」
ルシアには近くの影に隠れてもらい、1人で迎え撃つフリをする。
しかし『聖なる加護』が発動してるせいで光ってしまっているから、目立つかもしれぬな。
魔法で姿を隠そうにもやはり『聖なる加護』で無効化されるから、どうしようもない。
見つかったところで安全装置がひとつ減るだけだからそこまで問題はないが。
「来たな」
「大悪魔ラピアよ、よくも魔王様を裏切ったな」
「魔王様は下につかない貴様にも寛大な措置をとられた、それをこんな形で返すとはな」
「チカラ関係を理解していたから大人しくしていたかと思っていたが、愚かなヤツよ」
「貴様なぞ魔王様が出るまでもない、反逆したことを後悔しながら死んでいけ」
やはり、全員で来たか。
確実に仕留めるつもりだろうが、こちらとしても一網打尽にできて好都合だ。
「ルシア!」
「はい!」
合図に合わせてルシアの神聖魔法が発動し、四天王全員の魔装障壁を解除する。
「バカな!?」
「こんなことができるのは」
「まさか!?」
「貴様、勇者と手を組んだのか!」
勇者が近くにいると勘違いして、周囲を警戒するために妾から注意が逸れる。
今だ!
「『拘束する』!」
四天王4人それぞれの影が動き、纏わりついてその動きを封じる。
「ぐっ!?」
「まさか、ハッタリか!」
「だが、舐めるなよ!」
「この程度の縛を、我々が破れないとでも思ったか!」
そんなこと、承知しているに決まっておろう。
「そこまで言うのならリクエスト通り追加してやろう、『氷結』!」
4人をそれぞれ氷の柱の中へ閉じ込める。
影の拘束を受けたまま、内側からこの氷柱を破壊するのは魔王軍四天王といえど困難であろう。
……念には念を入れておくか。
「ついでに岩の下敷きにしてやろう、『落石』!」
更に氷柱の周囲を岩で固めて閉じ込める。
『ネーディスクリミネシオ』で生命力を奪われながら、この全てを突破することなどできはしまい。
仮に外へ出られたとしても瀕死だろうから、直接トドメを刺せばよい。
「なんというか、信じられないくらい上手くいきましたね」
「ルシアが魔装障壁を解除してくれたおかげだ、アレがあったらどれもレジストされてここまでの結果は出なかったであろう」
さて、連中の息が止まるまでしばらく待たねばな。
「……暇ですね」
「ちゃんと息の根が止まるのを確認してからでないとな、背後から襲われても困る」
最上級幹部なだけあって高い生命力だ、そう短時間で倒れはしないか。
正面から相対していてはルシアの支援があっても苦戦したであろう。
「じゃあ、今の内にお昼食べちゃいますね」
「緊張感の無いヤツめ、まあ構わんが」
もし外に出て来たとしても妾1人でどうとでもなる。
「ご馳走様でした!」
「粗末な食事ですまぬな、これが終わったらちゃんとしたモノを食べさせてやる」
「それじゃあ」
「決めたよ、共に人間界に行こう」
「わぁ、嬉しいです!」
ルシアと抱擁を交わす。
いつの間にか、この笑顔のためならいくらでも願いを叶えてやりたいと思う自分がいる。
想いとやらここまで人どころか悪魔さえも変えてしまうものなのか。
「と、終わったか」
『ネーディスクリミネシオ』による生命力の収奪が途絶える。
4人全員が息絶えたか。
「大きな墓標になったな」
「お花添えますか?」
「魔界の花でも献花してやれば嫌がらせにでもなりそうなモノだが、わざわざ採ってくるのも手間だな」
「勇者様がここに来ちゃう前に決着をつけなきゃいけないんですから、時間をかけていられませんよね」
「それに、今から更に大きいこの建造物が墓標になるのだ、花などいくらあっても足りんぞ」
目の前の魔王城を見据える。
別段恨みなど無いが妾とルシアの将来のため、貴様には踏み台になってもらおうぞ。
「始めるぞ、準備はよいな」
「はいっ!」




