やっぱり決戦前夜ですし、こういうことしたいんです。 私も
「さて、四天王は最早対策すら不要なわけだが」
「はい、私とラピア様の2人なら楽勝です!」
「魔王はそうもいかん、ルシアよ」
「なんでしょう?」
「当然、『聖なる加護』の対局に位置する『闇の結界』はどうにかできるな?」
アレを持つ魔王にもルシアと同じく『ネーディスクリミネシオ』は一切通用しない。
だが魔王討伐の使命を持つ聖女なら無力化する手段を持っているハズだ。
「当然できます、というか神聖魔法はそれが本命で他はオマケみたいなものですから」
「いや、他の神聖魔法も大事だぞ」
勇者と違って元々は魔王への対抗手段なぞ持っておらぬのだからな。
「ひとつ尋ねるが、射程はどれくらいだ?」
「目の前で使うんじゃないんですか?」
「正面衝突は可能な限り避けたい、魔王城の外からでも有効なのが理想だな」
「そんな遠くから使えるかなぁ」
この反応を見る限り厳しいか。
やはり何もかも首尾よく運んだりはしないな。
「正直に言いますけど、『闇の結界』の解除は魔王以外には一切意味の無い魔法ですから今まで1度も使ったことがないんですよぅ」
「……確かに、言われてみればそうなるな」
対魔王専用なのだから、当たり前のことだった。
「ところで、魔王城の外から有効だったらどうなるんですか?」
「労せず勝てる、なにせ魔王は魔王城の外に出られぬからな」
「あの、もう1回お願いできますか……」
「魔王は城から外に出られん」
「……?」
ふむ、固まってしまった。
呆けた顔も愛らしいが意識が戻ってこないと話が進まぬな。
「はっ、私は何を?」
「ようやく戻ってきたか、しかしそこまで驚くことでもなかろうに」
「そんなことありません、今の話おそらく人間界で知ってる人いませんよ」
「ほう……」
ということは、魔王は上手く立ち回ってるわけだ。
「ならばルシアには教えておこう。 魔王城は魔王の居城ではない、魔王を封印している地なのだ」
「どこの誰が封印なんて……」
「知らぬ、妾が産まれた時にはもうそうなっていたのでな」
まあ勇者や聖女ではないことは確かであろう。
「そして、自ら出向けない魔王は配下を使うことにした」
「それが魔王軍なんですか?」
「そうだ。 外には出られずとも能力に制限がかかっていなかったことを幸いに、手勢による人間界侵攻を始めた」
「でも外に出られないのならラピア様みたいに従わない選択もあるんじゃあ」
「結局のところ魔族も同類なのだろう、妾も人間を陥れることが嫌いなワケではないしな」
とはいっても、ルシアの嫌がることは絶対にせぬが。
「ついでにチカラを求める性質もあるからだろう、魔王の軍門に下れば簡単に強くなれるからな」
「どういう意味でしょう?」
「魔王の固有能力は他の魔族を強化することだ、代償として絶対服従となるが」
「じゃあ人間を襲うモンスターの中に特別強い個体が必ず混ざっているのは……」
「魔王の手で強化されたヤツだろう、正確にはその者らだけを魔王軍と呼ぶのだが」
まあ人間側からしたら区別などつかんか。
「人間を襲う群れのリーダーはほぼ間違いなくこの強化を受けているだろう、強くなければ統率もままならんだろうしな」
「つまり魔族は強者に従う性質があるんですね」
「知能が低い者は特にな、そして魔王の強化を受けて知能が向上しようともう契約で逆らえないのだから寝首を掻くこともできんというわけだ」
自身が外に出られない欠点を可能な限りカバーしている、しかも人間共に悟られないように。
「じゃあ、勇者と聖女の役目というのは……」
「魔王を討伐することで、他の魔族を烏合の衆に落とすことだろう」
そうなってしまえば、後は他の人間共でもどうにかなるといったところか。
「なんて言えばいいんでしょうか、勇者と聖女の存在も含めてそこまで都合のいいことってあります?」
「確かに作為的なモノを感じなくもないが、興味もないしな」
そんなモノは人間共で勝手に考えればいい、妾は知らん。
「話を戻すが。 もし魔王城の外からでも『闇の結界』を解除できれば魔王と直接対決する必要はない、だから射程は大事なのだよ」
「わかりました、試してみます」
ルシアが目を閉じて集中し、光が集まっていく。
が、結果的には魔法というカタチとして結実せずに霧散した。
「ダメです、ここからは届きません……」
「流石に無理か、ここは魔王城から結構距離があるからな」
逆に成功したら驚くところだ。
「なに、魔王城の外であればギリギリでもいいのだ。 落ち込むことはない」
「はい……」
「それにできなかったとしても安全装置が一つ外れるだけだ、直接対決で打ち倒せばよい」
「そうですよね、私とラピア様なら直接対決でも勝てますよね!」
うむ、ルシアに笑顔が戻って良かった。
やはり、沈んだ顔は見たくない。
「決戦は目前だぞ、勇者に先んじなければならない以上のんびりとしてはおれぬからな」
「はい!」
と。
力強い返事と共にベッドに運ばれ、そのまま押し倒された。
「ルシアよ、何のつもりだ?」
「やっぱり決戦前夜ですし、こういうことしたいんです。 私も」
「妾のような体型の者相手にそういった行為を求めるとは、変わった女だ」
だがどこかで、求められるのが嬉しい自分がいるのも確かだった。
「ダメ、ですか……?」
「構わぬ、ルシアの好きにするといい」
「はい、いただきまーす♪」




