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ふふっ、まるでプロポーズみたいですね

 ルシアが妾の下にやって来てから数日。


 勇者がどう動くかは不明だが、タイムリミットは恐らく近い。


 そろそろ、魔王討伐の話を進めねばな。




「するんですか、魔王討伐?」


「もし勇者が単独で魔王を撃破してしまえば契約不履行で『聖なる加護』は消えてしまうからな、魔王が勝つと信じて傍観に徹するのは分が悪い賭けだ」




 とはいえ、こっちにも魔王に挑み確実に勝利する算段など無いわけだが。




「前提として妾単独では魔王はおろか四天王にすら勝てん、だから現状不可侵で放置されているワケだが」


「以外ですね、強力な固有能力もあるのに」


「その『ネーディスクリミネシオ』がな、『聖なる加護』のように無効でこそないものの魔装障壁に軽減されてしまうのだよ」


「魔装障壁っていったら、上位魔族が常時展開している防護壁ですよね」


「そうだ、妾にもあるものだな」




 逆に言えば魔装障壁を持つ者が上位魔族と呼ばれる、とも。




「話を戻すが。 魔装障壁の前では『ネーディスクリミネシオ』の効果も落ちる、しかも妾にはコレをどうにかする手段が無い」


「え、どうしてそんなことになってるんですか?」


「基本的に魔族同士では殺し合いが起きぬからだ、魔王軍ともなればもっとな」


「魔族と敵対して魔装障壁対策を発展させている人間とは違うってことなんでしょうか?」


「その通りだ、必要ないから余程の変わり者しか対策などしておらん」




 ルシアと出会うまでは妾も魔王に歯向かおうなどとは考えもしなかったからな。




「そのせいでもし上位魔族同士の殺し合いが発生した場合、確実に泥仕合になる」


「お互いに攻撃が通りにくい、からですね」


「ああ、そしてその状態で四天王と4対1なんてことになれば妾の敗北は確実だ」


「四天王って1人づつ襲ってくるんじゃないんですか!?」


「そんなことあるワケがなかろう、ヤツらはそんな騎士道精神など持ってはおらぬぞ」




 全く、どこからそんな発想が出て来たのか……。




「だから、コレを使う」




 ルシアに一振りの大剣を見せる。




「ルシアが来る前に妾を討伐に来た人間が持っていたモノだ。 魔装障壁を無いがごとくこの身を切り裂いたから、名のある魔剣であろう」


「ラピア様を傷つけるとか許せないんですけど!」


「もう死体すら残っておらんぞ……」




 放置して良いことなぞ何もないし。


 というか、もしまだ生きていたらどうするつもりだったのか。


 いや訊くまい。




「話を戻すが。 この剣は魔装障壁を貫通できる、妾に剣の心得なぞ無いがそれを差し引いても有用であろう」




 直撃させれば、の話だが。




「いいえ、その剣は不要です!」


「なぜだ、先程も言った通り上位魔族同士の戦闘は……」


「だって、私の神聖魔法で魔装障壁はしばらくの間解除できますから」


「……なんだと?」




 どこまでも魔族を狩ることに特化しているな、神聖魔法は。




「ついでにラピア様のことも超強化できますから、四天王ごときには負けません!」


「ふふ……、ごときと来たか」


「さっきまでの言い方が気に入らなかったんですよ、まるで私を戦力にいれていないようで」


「四天王には勝つ算段がついたが魔王は更に強大なのだぞ、勝てる保証などどこにもないのだ」


「ラピア様が負けた場合、私は1人ぼっちになるんですけど」


「あ……」




 何を考えていたのか。


 1人に戻るのはもう耐えられないなどとのたまっていたクセに危うくルシアを1人にしてしまうところだったとは……。


 なんという愚かな。




「ルシアよ、そなたの言う通りだ」


「わかって頂けて嬉しいです!」


「共に往こう、敗北した場合は一緒に死ぬことになるが」


「いいじゃないですか、ラピア様がいない世界で生きていても仕方ありませんし」


「そうだな、妾もルシアがおらぬ世界になどもう存在する理由が無い」




 手を繋ぐ、温もりが伝わってくる。


 この温もりを失わないためにも、魔王を討伐して人間のままの不老不死を実現させねば。




「そうだ、そうだった」


「どうしたんですか?」


「魔王など通過点に過ぎなかったと思ってな、目指す場所は更にその先だ」


「『聖なる加護』を失わないままで長生きさせてくれるんですよね?」


「当然だ、そしてずっと妾の隣にいろ」




 とても自分のモノとは思えない言葉がスラスラと出て来る。


 しかもルシアと出会う前の妾からは考えられない内容のだ。


 変わってしまったというか、変えられてしまったというか。


 どっちもか。




「ふふっ、まるでプロポーズみたいですね」


「ぷろぽおず、とは?」


「知らないんですか、一生一緒にいる約束を申し込むことですよ」


「ふむ、人間にはそんな習わしがあるのか」




 まさか人間の真似をしていたとは。




「そうだ、私の故郷に帰ったら結婚式を挙げましょう!」


「待て、それは確か神の前で誓いを交わす儀式であろう。 妾は悪魔だぞ」


「そんなの形だけですって、本当に神様から何かされるわけじゃないんですから」




 聖女としてその発言はどうなのだ?




「これで魔王を倒してからやることが増えましたね」


「ルシアには勝てぬな、だがそれくらいの気概の方が良いのやもしれぬ」


「そうです、世界平和のためとかじゃなくて私達の幸せのために魔王を倒すんですから」


「ならば。 2人で往こうぞ、ルシア」


「はい、ラピア様」

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