ルシアのチカラになるというのであれば、いくらでもしてやろうではないか
「な、何事だ!?」
「きゃあ!?」
轟音が響き、地面が揺れる。
「これはウリユの仕業か、滅茶苦茶なことをするヤツだ」
激しい揺れだったがそれでも繋いだ手は離さずに踏ん張る。
が、ルシアは耐え切れず尻もちをついた。
「ルシア、大丈夫か!?」
起きるのを手伝うために手を引くが、ルシアの身体には力が入っておらず……」
「はぁっ、はぁっ……」
息が荒い、かなり疲労している。
そういえば『聖なる加護』を結界のように拡大するのは初めてだと言っていたな。
消耗が激しいのか……。
「くっ、まだまだいるな……」
『ネーディスクリミネシオ』の射程内にはまだまだ新たにモンスターが入ってくる。
数が多いとは聞いていたがここまでとは、どうする……?
「俺達に戦わせてくれ!」
背後からハッキリとした声がする。
「ルシアを休ませたいんだろう、なら俺達が戦う!」
「だがお前達に戦いの心得など無いのだろう、死ぬぞ」
「だからってこのままあんたら2人だけに任せていられるか、少しだけでもルシアの負担を肩代わりさせてくれ!」
なんと心意気が立派な人間共だ、だが。
「これはルシアが1人も犠牲を出さず勝利するために自ら選択した戦いだ、お前達の提案は受けられん」
「ルシアが、そんなことを……」
「お前達の内1人でも死ねばルシアは悲しむ、妾はルシアの泣き顔など見たくはない」
とはいえ、このままではルシアが限界まで長くないのも事実。
何か手はないか、何か……。
「だ、大丈夫です……」
「立ち上がって平気なのか?」
「皆さんの気持ちは受け取りました、この程度ではへばっていられませんから」
間違いなく強がりだ。
だが妾にもどうすることもできん、癒す治すなど専門外だ。
「何が大悪魔だ、妾はこんなにも無力ではないか……」
自分だけ生命力を収奪し続けているのが口惜しい……。
「うっ……」
「ルシア!?」
再びルシアが崩れ落ちる。
もう人間共を開放し戦って貰うしか手は無いのか……。
他にルシアが活力を与える方法は……。
いや、迷っている場合ではないな。
「ええい、ままよっ!」
「!?!?」
ルシアの唇に自分自身の唇を触れ合わせる。
ルシアが元気になる方法といったら、もうこれくらいしか思いつかぬ。
「少しは、チカラが戻ったか?」
「ラピア様、もう一度ください!」
そう言いながら今度はルシアから口づけを返してくる。
握る手に先程よりもチカラが入っているのを感じる。
こんな根性論で上手くいくなどとは思っておらなんだが、こんなにも効果覿面とは。
いや違う、これは……。
「ラピア様、もう一度!」
「ああ、勿論だ」
三度目の接吻を交わす。
(これは間違いない、『ネーディスクリミネシオ』で奪った生命力がルシアに流れ込んでいる!)
こんな使い方があるなどとは一切知らなんだぞ、いや……。
(『ネーディスクリミネシオ』発動中にこのような行為をしたことなど一度もないのだから、知らないなど当たり前か)
だが、これなら。
(妾がルシアを支えることができる!)
ずっとこの体制を続ければならないが、些細なことだ。
最早、敵がどれだけいようと関係ない。
「ありがとうございますラピア様、もう大丈夫です」
「やせ我慢ではないな?」
「はい、それに疲れたらまたラピア様キスしたらいいんですから」
「ルシアのチカラになるというのであれば、いくらでもしてやろうではないか」
これなら持久戦も問題なく行える、こうなればもう負ける要素などない。
程なくして、『ネーディスクリミネシオ』の射程内にいる全ての収奪対象が消えた。
「終わったか」
「私達、勝ったんですね」
「そうだ、ルシアは全員を守り切るという理想を自身で勝ち取ったのだ」
「ラピア様がいてくださったからですよ、あとウリユも」
そう言うルシアの視線の先には、ウリユがいた。
「なんだ、戻って来たのであれば声を掛ければよいというのに」
「いえ、タイミングがタイミングだったので難しかったであります」
「なんだと?」
「お2人がその、真っ最中でありましたので……」
「む……」
あの時に戻っていたのか。
確かに邪魔されたくはなかったが。
「まあよい、では行くぞ」
「どこへでありますか?」
「出陣前に言ったであろう、悪魔が住み着いたなどと知られればこの村は焼かれることになる」
「そうです、私達はその覚悟で戦ったんですから」
「人間共が我々を追い出したことにしてしまえばよい、それで聖教会に目をつけられることはなかろう」
居心地は悪くなかったが、これでお別れか。
悪魔らしくない行動だった自覚はあるが、ルシアが泣かずに済んだのであればそれでよい。
「それから言い忘れていたが、始末したモンスターの死体は生命力を奪っただけだから奇麗なままだ。 好きに使うがよい」
人間はモンスターの死体を欲しがるらしいのでな。
言い残したのはこれくらいのものか。
「今度こそ行くぞ、我々には本来の目的があるのがからな」
「待ちなよ!」
声を掛けられた方向へ振り向く、そこにいたのは……。
「お母さん、どうしてここに?」
「娘が戦っているって知ったら居ても立ってもいらねなくてね、まあここにいても見てることしかできなかったんだけどさ」
「そうだったんだ。 でもダメだよ、私とラピア様を匿ってるって知られたらこの村が……」
「知られるもんかい、田舎の結束舐めるんじゃないよ」
「お母さん、それって……」
2人のやりとりを完全に理解したわけではないが、つまり。
「村ぐるみで妾の存在を表に出さないようにする、ということか?」
「そういうことさね、いいだろみんな!」
「勿論だとも!」
「あんた達はこの村の英雄だ!」
「いつまでだって居てくれていいんだぜ!」
なんだ、何が起こっている?
なぜ人間に歓迎されているのだ?
「待て、妾は人間共を守るためなんて理由で戦ったわけではないぞ!」
「じゃあなんだっていうんだい?」
「お前達の内1人でも死ねばルシアが悲しむ、それ以外あるわけがなかろう」
「それで十分さね。 あんたが悪魔だろうとルシアだけは絶対に裏切らない、そうだろ?」
「フン、当然だ!」
それだけは絶対に違えない、妾の誓いだ。
「それに親として娘の晴れ姿も見たいからね、他所で結婚式をやるなんてとんでもない!」
「ちょっと、お母さん!」
これは、言葉では勝ち目がないな。
「よかろう、ならばその結婚式とやらまでは滞在することとしよう」
「ラピア様まで!」
「……お嬢様が結婚式の意味を理解しているかどうかは微妙なところでありますねぇ」
事態が予想外の方向へ傾いたが、ルシアが笑っておるのだからまあよかろう。
「話が纏まったところでよぉ、俺達の拘束も解いてくれ」
「しまった、忘れておった……」




